あまつさえ、愛だとか。

「…凄かったです。ただ目の前のことだけに夢中になるというか…ずっと目が離せない感じが、あぁ、舞台なんだ…って実感しました」


そこまで言い切ってから、口を噤む。
…なんだろう。
口に出すと、途端に薄っぺらく感じる。
自分の言葉はここまで厚みがないものだったのか。
もはや悔しいとまで思えてきた。
心中渦巻く感情の波を、そのまま言葉にできたらいいのに。
未だにドクドクと跳ねる心臓を、そのまま差し出せたらもっと伝わるのに…。
表現の仕方にもどかしさを感じながらも、背伸びして頼んだアメリカンを一口流し込む。

………にがい。

比較的飲みやすいと言われ頼んだのに、舌先から口の中いっぱいに苦味が広がってゆく。
「店主の嘘つき…!」とは流石に言えないが、顔を顰めそうになるのを必死で堪えた。
まだまだ自分は子供だと、未熟なのだと言われているような気がしていたけれど。



「うん…うん、わかるよ」



俺の言葉を噛み締めるように咀嚼して、頷いた。
そして、ようやく飲み込めずにいたものがストンと胸に落ちた。
…あぁ、そうか。
今、俺と二階堂先輩は共感しあっているのだ。
目に映る景色を同じ色で、感情で、先輩と心を共有できている。

それが、こんなにも嬉しくて、愛おしい。