────すごい…。
これほどの観客を目の前にして、呼吸のひとつも誤魔化せないあの舞台の上で。
堂々と、強く根を張り立っている。
リアルに綴られ続ける言葉が、全て生もの。
だからこそ、その感触がそのまま伝わってくるのだ。
…先輩は、どんな表情でこの世界を見てる?
気になるけれど、答え合わせはまたあとで。
今はただ、俺が見ている景色を焼き付けたい。
「『それなら私は、いっそう貴女に跪こう。この一生をかけて、熱を注ぐと誓わせてくれはしないか』」
自分には到底言えない真っ直ぐな台詞も、並々ならぬ声量も。
この熱に当てられて、今すぐ芝居がしたくてたまらない逸る気持ちを抑えた。
気づけば迎えていたカーテンコール。
拍手喝采を浴びた役者の、生身の人間が纏うものに、自分でも知らない感情が湧き上がった。
***
俺達は、公演が終了してから劇場の近くにあった趣のある喫茶店に入った。
店内に立ち込める香ばしい豆の香りは、なぜか大人になったような気にさせる。
「舞台演劇は初めてだって言ってたけど…どうだった?」
気のいい店主におすすめされたコーヒーを啜りながら、二階堂先輩は期待のこもった瞳で尋ねてきた。


