――絶対に将棋部をぶっ潰す。何としても廃部に追い込んでやる!
僕の中にメラメラと怒りの炎が燃え上がった高校二年の四月。
どうしてこんな不穏な事を考えているかと言うと、僕は新入生部活勧誘で将棋部に完全敗北したから。
空気の入れ替えのために部室の窓を開ければ、隣室の将棋部から賑やかな活動の声が聞こえてくる。その声に腹の底がムカムカしてきて右手を握りしめた。
――将棋部さえ無ければ!
悔しさに唇の内側をギリっと噛んだ。
僕が所属するボードゲーム部は部員二名の弱小部。今は高校三年の島田部長と副部長をしている高校二年の僕しかいない。これは部の存続に関わる。
だからこそ今年の新入生勧誘は必死に頑張った。
四月に行われた新入生向けの部活紹介。
ボードゲームの楽しさを懸命に伝えた。
ボードゲーム部は試合などでプライベートの時間を削ることは無い。
さらにネットゲームなどにはないリアルの楽しさを味わえる。体験型ゲームであることをアピールし、その後の部活見学希望には新入生十名の希望してくれた。
部に届いた見学希望用紙をテーブルの上に並べて部長と向かい合ってそれを眺めた。
「やったよ! 長倉君! 部活始まって以来の快挙じゃないか? 十名の見学希望者だ!」
部長が眼鏡の奥の瞳を潤ませて感極まっている。
「島田部長! やりましたね! 緊張したけど部活紹介、頑張った甲斐がありましたね!」
「だね。あとは、見学に来てくれた子を丁寧にもてなして……」
「あはは。部長、普通で良いじゃないですか。ここには楽しめるゲームがたくさんありますから」
「そっか。そうだよね。何人入部してくれるかな? 十人全員入部しちゃったりして。うわ~、嬉しすぎる!」
「ですね。そうなれば我がボードゲーム部も将来安泰です」
僕よりやや背の低い島田先輩とがっしり手を握った。
「長倉君! 君は本当に優秀な副部長だ! 君のアイドル系男子の顔が一役買ってくれた!」
急に僕の外見の事に話が飛ぶから、僕はガクリと肩を落とした。
「部長、止めてください。僕の外見じゃないですよ。純粋にテーブルゲームの魅力です!」
「謙遜するな。この可愛い猫目に白い肌。茶色い髪のアイドル顔はそうそういないぞ。さらにな、長倉君の一押しポイントは身長だ。百七十五センチと決して低くないこと。ちゃんと男子なのに可愛い顔ってのが良いんじゃないのか?」
フムフムと僕を物色する部長にフイっと背を向ける。
昔からそうだ。少し物事がうまく行くと、整った外見のおかげだと言われる。そうじゃないと自分では思っているのに。部長に一言いたいと思った、その時。コンコンとノックの音が響いた。
「失礼します」
部室のドアがガチャっと開く。
「はい?」
「え?」
僕と部長は同時にドアを向いた。現状でこの部室に顔を出す者などいないはず。顧問の先生は幽霊顧問になっているし、部活見学開始は来週だ。
「あの、昨日休んでしまい、見学希望の用紙を出せなくて。直接持っていけって担任に言われんですけど、いいですか?」
ドアが開いた先には、僕より身長が高いモデルのようなイケメンがいた。
センター分けした黒髪がさらりと揺れる。切れ長の黒目は迫力がある。僕とは真逆のカッコイイ男子だ!
――これ、どう見ても運動部男子じゃないのか?
そんな疑問が脳裏を過るほど体格がいい。
彼の迫力に気圧されて僕と部長はポカンと口を開けたまま立ち尽くした。
「あの~、もう用紙は受け入れてもらえませんか?」
イケメン男子は困った顔をした。
僕たち三人はそのまましばらく見つめ合った。
僕の中にメラメラと怒りの炎が燃え上がった高校二年の四月。
どうしてこんな不穏な事を考えているかと言うと、僕は新入生部活勧誘で将棋部に完全敗北したから。
空気の入れ替えのために部室の窓を開ければ、隣室の将棋部から賑やかな活動の声が聞こえてくる。その声に腹の底がムカムカしてきて右手を握りしめた。
――将棋部さえ無ければ!
悔しさに唇の内側をギリっと噛んだ。
僕が所属するボードゲーム部は部員二名の弱小部。今は高校三年の島田部長と副部長をしている高校二年の僕しかいない。これは部の存続に関わる。
だからこそ今年の新入生勧誘は必死に頑張った。
四月に行われた新入生向けの部活紹介。
ボードゲームの楽しさを懸命に伝えた。
ボードゲーム部は試合などでプライベートの時間を削ることは無い。
さらにネットゲームなどにはないリアルの楽しさを味わえる。体験型ゲームであることをアピールし、その後の部活見学希望には新入生十名の希望してくれた。
部に届いた見学希望用紙をテーブルの上に並べて部長と向かい合ってそれを眺めた。
「やったよ! 長倉君! 部活始まって以来の快挙じゃないか? 十名の見学希望者だ!」
部長が眼鏡の奥の瞳を潤ませて感極まっている。
「島田部長! やりましたね! 緊張したけど部活紹介、頑張った甲斐がありましたね!」
「だね。あとは、見学に来てくれた子を丁寧にもてなして……」
「あはは。部長、普通で良いじゃないですか。ここには楽しめるゲームがたくさんありますから」
「そっか。そうだよね。何人入部してくれるかな? 十人全員入部しちゃったりして。うわ~、嬉しすぎる!」
「ですね。そうなれば我がボードゲーム部も将来安泰です」
僕よりやや背の低い島田先輩とがっしり手を握った。
「長倉君! 君は本当に優秀な副部長だ! 君のアイドル系男子の顔が一役買ってくれた!」
急に僕の外見の事に話が飛ぶから、僕はガクリと肩を落とした。
「部長、止めてください。僕の外見じゃないですよ。純粋にテーブルゲームの魅力です!」
「謙遜するな。この可愛い猫目に白い肌。茶色い髪のアイドル顔はそうそういないぞ。さらにな、長倉君の一押しポイントは身長だ。百七十五センチと決して低くないこと。ちゃんと男子なのに可愛い顔ってのが良いんじゃないのか?」
フムフムと僕を物色する部長にフイっと背を向ける。
昔からそうだ。少し物事がうまく行くと、整った外見のおかげだと言われる。そうじゃないと自分では思っているのに。部長に一言いたいと思った、その時。コンコンとノックの音が響いた。
「失礼します」
部室のドアがガチャっと開く。
「はい?」
「え?」
僕と部長は同時にドアを向いた。現状でこの部室に顔を出す者などいないはず。顧問の先生は幽霊顧問になっているし、部活見学開始は来週だ。
「あの、昨日休んでしまい、見学希望の用紙を出せなくて。直接持っていけって担任に言われんですけど、いいですか?」
ドアが開いた先には、僕より身長が高いモデルのようなイケメンがいた。
センター分けした黒髪がさらりと揺れる。切れ長の黒目は迫力がある。僕とは真逆のカッコイイ男子だ!
――これ、どう見ても運動部男子じゃないのか?
そんな疑問が脳裏を過るほど体格がいい。
彼の迫力に気圧されて僕と部長はポカンと口を開けたまま立ち尽くした。
「あの~、もう用紙は受け入れてもらえませんか?」
イケメン男子は困った顔をした。
僕たち三人はそのまましばらく見つめ合った。



