照れた君を見せてほしい

「先輩の目玉焼き、半熟度合いが俺の好みのドンピシャで今かなり興奮しています」

「そんな真面目な顔して興奮するとかやめてよー、普通においしいだけでも十分なのに」

 朝ごはんはトースターで焼いたパンに先輩が作った目玉焼きを乗せたものだった。

 黄身を食べると中からトロっと溢れ、パンに染みていく。

 あごにも伝ってきてしまうが、味が良いので許すことにする。
 ちょっと恥ずかしくて、先輩が見ていないうちにティッシュで拭こうとする。

 しかし、先輩のあごにも黄身が伝っている。

 おそろい……

 バチっと目が合うと、先輩はティッシュであごを拭きながらふっと微笑んだ。

「見られちゃったねー」

「はい、俺も見られました」

 急いでティッシュで拭きとると、先輩はさらに笑いだす。

 そんなにおかしかったのだろうか。

 先輩は椅子から立って、俺の席のほうへ近づいた。

「鼻についてるよ」

「えぇ!」

「待って、まだ拭かないで」

 俺は訳が分からず先輩を見上げることしかできない。

「写真撮っちゃお」

「え、嫌です。拭きます」

「待って待って待って、分かった写真は撮らない。でも、俺に取らせて」

「え?」

 先輩は少しかがんで俺の目線に視線を合わせる。

「目、つぶって……」

 まっすぐ見つめられて、逸らす代わりに目をつぶった。

 数秒、何も音がしなかった。

「先輩?」

「ん?」

「目、開けますよ」

「ダメダメ、もうちょっとそのままね」

 声だけでも胸がドキドキしてしまう。

 視界が真っ暗で先輩の声だけが俺の感覚に入ってくる。

 突然、先輩の熱が顔の近くで感じられる。

 たぶん、先輩の顔が俺の目の前に……

 次の瞬間、鼻に柔らかいものが当たる。

 すぐに目を開いてしまった。
 目の前には先輩の顔面がある。

 目が合う、そう頭でわかるよりも先に先輩はもっと顔を近づけて、キスをした。

 この味……

「せんっぱい、これ」

「ん? きみ、だよ」

 してやったり、とでもいうかのような表情で先輩は席に戻っていく。

 パンを再び食べ始める先輩。もう黄身は垂れていない。

 先輩、なんか余裕そうな雰囲気あるけど、実は耳が真っ赤なところとか、意識してるか分からないけどめっちゃ押せる……

 かわいいぃぃぃぃぃぃぃ……

 先輩ぶってるって言ったら失礼だけど、先輩もちゃんと照れてくれてる。

 俺に気づかれないとか思いましたか?

 俺は先輩のこと誰よりも見ていますから、耳の赤さなんて一発で見抜けるんですよー。

「睦月、にやけているね」

「へ?」

 先輩は俺のことをまっすぐ見ながら……

「顔が真っ赤だね」

 その一言だけで、俺は先輩以上に体が真っ赤に染まりそうな気がした。