照れた君を見せてほしい

 目が覚めるといつもと違う天井の色。

 横に首を回すと先輩の寝顔がある。

 先輩の長いまつ毛がカーテンの隙間から差し込む光に照らされてよく見える。

 あれ、昨日俺……

「あ、おはよ」

 眠そうに眼をこすりながら微笑む先輩。

 二人とも寝ているから、顔がいつもよりずっと近くて緊張してしまう。

 こんな先輩の姿が見れるなんて最高すぎる。

 だけど、待ってくれよ……

 昨日の記憶が一切ない……

 あのあと、先輩に押し倒されて、その後どうなった?

 こんなに記憶がないことあるのか?

「昨日はありがとね」

 にこっとかわいらしく微笑んでいるが、全然それどころじゃない。

 どこまでやった? 何も覚えてない。

「睦月」

 不意に名前を呼ばれて先輩を見据える。

 すっと顔が近づいてくる。

 コツンっーー

 おでこに小さな痛みが走る。

 いたずらな小悪魔のような笑顔を浮かべている。

「その驚いてびっくりしてる表情めっちゃかわいい」

「いや、先輩のほうがかわいいです」

「んーん、別に俺って人前では結構かわい子ぶってるよ」

「え、うそ……」

 予想外の暴露に頭が追い付かない。

 あんなに可愛いと思っていた先輩が全部作り物だったなんて、すぐにそれを現実と受け入れられない。

「引いた? 嫌いになった?」

 いつもならこういう時に上目遣いをしてくるけれど、先輩はまっすぐ俺のことを見ていて、むしろその視線をかっこいいと思ってしまった。

「嫌いになるわけありません。ただ、驚いたのは本当です」

 先輩はしばらく黙り込んでしまう。

 数秒先輩はじっと見つめてきて、やがて柔らかく微笑んだ。

「ありがと」

 先輩は体を起こして伸びをする。

「朝ごはん、何か作ろうか」

「え! いいんですか?」

 先輩の朝ごはんが食べれるなんて幸せすぎる。

 突然先輩が「フッ」と声を漏らした。

「どうしましたか?」

 しばらく先輩は笑うのを堪えるようにかがんでいる。

 ゆっくり立ち上がると先輩は振り返って悪戯な笑みを向ける。

「大好きだよ」

 不意の大好き……

 顔面の温度が一気に急上昇してしまう。

「これからもっと照れていいよ」

 そう言い残して先輩は部屋から出て行った。

 今日の先輩、なんだよ一体もう。

 可愛いというか、新しい魅力というか。

 いたずらな笑みを向けてきて、余裕があるあの感じ。

 たまらない……

 それよりも、俺は昨日の夜本当に何をしていたんだ?

「そうだ! 睦月、これから三日間親いないから、その間はずっとうちにいなよ」

 不意の言葉にしてはとても重要なことを言う。

 耳を疑ったが、俺が先輩の言葉を聞き間違えるはずがない。

 これから、三日間先輩と一緒に過ごすだと!?

 普段は顔の温度なんか気にしないのに、その時は沸騰しそうなくらい熱くなっていた。

「本当にいいんですか?」

「いいよ、一緒にいよ。これから冬休みだし」

 先輩の声が壁に反射するだけで俺は幸せだ。

 それに加えて一週間も先輩と一緒に過ごすだなんて……

 俺死ぬのかな?