鬼狩りの番~置き去りにされた娘は、半人半鬼に血を捧げる~

三日後。
任務へと向かう車の後部座席で、私は朔夜の隣に座っていた。

狭い車内には、私たちの他にも二組の鬼狩りと、その番の方々が同乗している。
並んで寄り添うように座る彼らの間には、互いを慈しみ合うような親密な空気が流れていた。
膝の上で重ねられた手。
何気なく外套を掛け直す仕草。
言葉にしなくても通じ合っているような眼差し。

私と朔夜に比べて、その距離感は驚くほど近く、自然に見えた。
きっと、色々なことを共に乗り越え、長い年月を連れ添ってきたのだろう。

「——これから向かうのは、鬼に占拠された村だ」

朔夜の声が、車輪の振動を縫うように低く響く。

私が襲撃を受けたあの日、目にした鬼はたったの二体だった。
けれど、そのたった二体に、平和だった集落の人々は一瞬で蹂躙された。
村一つが丸ごと占拠されるほどだなんて、一体どれほどの数の鬼が跋扈(ばっこ)しているのだろう。

あの夜の赤い空。
血の匂い。
泥の上に転がった母の位牌。
思い出した途端、膝の上で握った手に力が入った。

「心配するな。お前たち番が待機する場には、鼠一匹通さない」

朔夜はそう言い捨てると、静かに瞼を閉じ、悠然と脚を組んだ。
背もたれに預けられた彼の腕が、振動のたびにわずかに私の肩に触れる。
無愛想な彼なりの、不器用な気遣いなのだろうか。
伝わってくる確かな体温が、私の緊張を少しだけ和らげてくれた。