鬼狩りの番~置き去りにされた娘は、半人半鬼に血を捧げる~

永太。
琴。

名前を呼びたいのに、声が出なかった。
ただ、胸の奥で何かが音もなく崩れていく。
それはきっと、あの日から必死に抱え続けていた、最後の希望だった。

「……すまない。俺の確認不足だった。まさか、身内を切り捨てて報告を上げていたとは……」

顔を上げる。
朔夜の痛ましげな表情が見えた気がした。
次第に視界が涙で歪み、何も見えなくなる。

「永太……琴……。どうしよう、私のせいだ。私が、あの時無理にでも二人を抱えていれば……あの子たちを、ちゃんと……」
「違う!お前のせいではない!」

ぐっと、肩を掴んでいた熱い掌が離れたかと思うと、有無を言わさぬ力で、その胸の中へと抱き寄せられた。
息が詰まるほど強い。
けれど、その強さに寄りかからないと、今にも崩れ落ちそうになる。

「それは違う。それを言うなら……俺が、もう少し早くあの場に到着してさえいれば、こんなことにはならなかった」
「そ、んな……朔夜のせいじゃ……っ」
「俺が、必ず見つけ出す。お前の弟も、妹もだ。約束する」

見つけ出す。
その力強い言葉に縋りたい一方で、冷たい現実が頭をもたげる。

集落が襲撃を受けてから、すでに一週間以上の時間が経ってしまった。
あんなに小さな子どもたちが、鬼から逃げられても、飢えや寒さを凌いでいられるだろうか。
生存の確率は、限りなく無に等しいのではないか。

考えたくない。
けれど、考えずにはいられない。

「二人がいなくなったら、わ、たし……本当の家族が……独りになって……」
「……俺がいる」
「朔夜……?」
「俺が、お前の家族になる。お前を独りにはさせない」

家族に……。
血の繋がりも、共有した時間もほとんどない私と朔夜が、家族になる。
それは番という、契約や役割で縛られただけの関係ではない、もっと別の……。
その名前を私は知っているけれど、口に出すのも躊躇われる……

「え……それ、は……」
「……お前を番として迎えたあの日から、俺はそのつもりでいた」