鬼狩りの番~置き去りにされた娘は、半人半鬼に血を捧げる~

目を覚ましてすぐ、昨晩の記憶が一気に蘇って、布団の中で身悶えした。

鬼に襲われてから今日という日まで、私の常識では到底理解できないことばかりが続く毎日。
知らず知らずのうちに情緒不安定になっていた自覚はあった。
あったけれど。

まさか、あの朔夜に抱きしめられ、子どものように泣きじゃくってしまうなんて……!

「ううっ……」

顔を両手で覆い、恥ずかしさのあまり布団の中で足をバタバタと暴れさせる。
思い出すのは、あの腕の力強さと、肩に置かれた大きな手の熱。
それから、ひどく不器用な声で告げられた「これ以上、泣くな」という言葉。

命令のようでいて、少しも冷たくなかった。
あれを思い出すたび、胸の奥が勝手にきゅっと縮こまる。

「梓様。朔夜様が、朝餉もご一緒にと仰っております」

障子の外から掛けられた控えめな声に、跳ね起きた。

「は、はいっ!?すぐに、すぐに向かいます!」

今日は休養日だと聞いていたのに、朝からまた顔を合わせるなんて。
私は心臓を激しく脈打たせながら、大急ぎで身支度を始める。

最初に袖を通した濃紅の装束の他にも、箪笥には着物や洋服が何枚も誂えられていた。
間違いなく私個人のために用意されたものだろうけれど、どれも見たこともないほど艶やかで上質な生地ばかり。
指先で触れるだけでも、粗末な手が叱られてしまいそうな気がする。

本当に、村娘だった私が袖を通してもよいものなのだろうか。
迷いに迷った挙句、結局は昨日と同じ、一番見慣れた服を選んで部屋を飛び出した。