静まり返った部屋に一人残され、私は再び、柔らかな布団に身を沈める。
「……豪華な部屋」
部屋には、仄かに沈香の薫りが漂い、御簾で守られた空間には、触れるだけでため息が出るような厚手の絹布が敷かれている。
几帳の向こうには磨き上げられた調度が並び、灯された行灯の明かりが、金具を淡く照らしていた。
誰かが着替えさせてくれたのであろう寝間着も、以前の私が着ていた継ぎ接ぎの着物より、ずっと上等で滑らかな肌触りだ。
温かい。
清潔で、静かで、恐ろしいほど守られた場所。
けれど、その安堵は長く続かなかった。
「永太……琴……ちゃんと逃げたかな……」
私が見捨てられたあの場に、二人の姿はなかった。
父たちが、せめてあの子たちだけは、凍える夜から救ってくれていると信じたい。
琴の小さな手。
泣き出すのを堪えていた永太の唇。
布団の中で「ずっといっしょ」と笑った声。
思い出した途端、喉の奥が詰まった。
そうでなければ、この温かな部屋で、私はまた、止まらない涙に溺れてしまいそうだったから。
「……豪華な部屋」
部屋には、仄かに沈香の薫りが漂い、御簾で守られた空間には、触れるだけでため息が出るような厚手の絹布が敷かれている。
几帳の向こうには磨き上げられた調度が並び、灯された行灯の明かりが、金具を淡く照らしていた。
誰かが着替えさせてくれたのであろう寝間着も、以前の私が着ていた継ぎ接ぎの着物より、ずっと上等で滑らかな肌触りだ。
温かい。
清潔で、静かで、恐ろしいほど守られた場所。
けれど、その安堵は長く続かなかった。
「永太……琴……ちゃんと逃げたかな……」
私が見捨てられたあの場に、二人の姿はなかった。
父たちが、せめてあの子たちだけは、凍える夜から救ってくれていると信じたい。
琴の小さな手。
泣き出すのを堪えていた永太の唇。
布団の中で「ずっといっしょ」と笑った声。
思い出した途端、喉の奥が詰まった。
そうでなければ、この温かな部屋で、私はまた、止まらない涙に溺れてしまいそうだったから。



