その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
同時に、名状しがたい高揚感が込み上げた。
……嬉しいと、思ってしまったのだろうか。
会ったばかりの人に対して、そんなふうに胸を揺らすなど、あまりにもおかしいのに。
「あの、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「なんだ」
不可解な感情を誤魔化すように、先ほど見た幻影について口を開く。
「朔夜のお姉様は……鬼に、殺されたのですか?」
空気が、すっと冷えた。
彼の指先が、私の手の上でわずかに強張る。
「……なぜ、それを知っている」
「……申し訳ありません。眠っている間、誰かの記憶のようなものを見てしまって。……これも、番になったからなのでしょうか」
「……さあな。番を持つなど初めてのことだ。俺にもわからん」
やはり、あの夢は、彼の過去の記憶だったのだ。
軽々しく踏み込んではいけないものに触れてしまった。
そう思った途端、胸が小さく痛む。
「経緯はどうあれ、お前は俺の番だ」
そう告げる彼の瞳が、まっすぐに私を射抜く。
「この先、お前の命は俺のものだ。俺の知らぬところで、傷つくことも、死ぬことも断じて許さん。忘れるな」
言葉は乱暴で、傲慢でさえある。
けれど、その真意は、不器用なまでの守護の誓いに聞こえた。
私という存在を、決して手放さないという、彼なりの。
胸の奥で、また小さく鼓動が跳ねる。
「食事を持ってこさせる。食べ終えたら、支度を整えろ」
「支度、ですか?」
「詳しい話はその後だ。今は食え。顔色が悪すぎる」
そう言い残し、彼は振り返ることなく御簾の向こうへと消えていった。
乱暴な足音が遠ざかる。
その気配が消えても、首筋に重ねられた手の熱だけが、まだ残っている気がした。
同時に、名状しがたい高揚感が込み上げた。
……嬉しいと、思ってしまったのだろうか。
会ったばかりの人に対して、そんなふうに胸を揺らすなど、あまりにもおかしいのに。
「あの、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「なんだ」
不可解な感情を誤魔化すように、先ほど見た幻影について口を開く。
「朔夜のお姉様は……鬼に、殺されたのですか?」
空気が、すっと冷えた。
彼の指先が、私の手の上でわずかに強張る。
「……なぜ、それを知っている」
「……申し訳ありません。眠っている間、誰かの記憶のようなものを見てしまって。……これも、番になったからなのでしょうか」
「……さあな。番を持つなど初めてのことだ。俺にもわからん」
やはり、あの夢は、彼の過去の記憶だったのだ。
軽々しく踏み込んではいけないものに触れてしまった。
そう思った途端、胸が小さく痛む。
「経緯はどうあれ、お前は俺の番だ」
そう告げる彼の瞳が、まっすぐに私を射抜く。
「この先、お前の命は俺のものだ。俺の知らぬところで、傷つくことも、死ぬことも断じて許さん。忘れるな」
言葉は乱暴で、傲慢でさえある。
けれど、その真意は、不器用なまでの守護の誓いに聞こえた。
私という存在を、決して手放さないという、彼なりの。
胸の奥で、また小さく鼓動が跳ねる。
「食事を持ってこさせる。食べ終えたら、支度を整えろ」
「支度、ですか?」
「詳しい話はその後だ。今は食え。顔色が悪すぎる」
そう言い残し、彼は振り返ることなく御簾の向こうへと消えていった。
乱暴な足音が遠ざかる。
その気配が消えても、首筋に重ねられた手の熱だけが、まだ残っている気がした。



