鬼狩りの番~置き去りにされた娘は、半人半鬼に血を捧げる~

喉が千切れるほど名前を呼びながら外へ飛び出したが、二人はおろか、父も、継母も、鈴の姿も、どこにもなかった。
残されていたのは、踏み荒らされた土と、遠ざかっていく幾つもの足音だけ。

私は、()てられたのだ。
その残酷な事実を飲み込むのに、さほど時間はかからなかった。

逃げた先のことを考えたら、口減らしのために一人でも荷物を減らしたかったのだろう。
その時、家族にとって一番に切り捨てるべき邪魔な存在が、私だった。
ただ、それだけのこと。
あまりにも簡単で、あまりにも惨めな答えだった。

「邪魔だ、どけっ!」
「……っ!」

逃げ惑う群衆に突き飛ばされ、冷たい地面に這いつくばる。
腕に抱えた位牌だけは離すまいと、咄嗟に胸へ押し込んだ。
肩が石に打ちつけられ、鈍い痛みが走る。

立ち上がらなければ。
私も、逃げなければ。
永太と琴を、あの三人がまともに守ってくれるかわからない。
すぐに追わなければ。

頭ではそう理解しているのに。
石のように冷え切った足には、もう指一本動かす気力が残っていない。

「おか、あさん……っ……!」

堪えていた涙が、堰を切ったように溢れ出す。
それは死への恐怖か、あるいは身内に裏切られた絶望か。
母の位牌を抱きしめたまま、私は泥の上で息を詰まらせた。
心が粉々に砕け散っていくような感覚に、立ち上がる術すら見失ってしまう。

「いやぁぁぁっ……!」
「ぐ、あぁっ!」
「ぎゃあああ!!!」

不意に、これまでとは質の違う、悍ましい悲鳴が夜の静寂を塗り潰した。
怒号でも、泣き声でもない。
命が千切れる音だった。

肉が裂け、骨が砕かれるような鈍い音が近づいてくる。
恐る恐る振り返った私の瞳に、地獄が映り込んだ。