"みなも"みたいな恋だった

指揮者になった私はまず、音楽の基礎知識を勉強した。
クラッシックからポップスやジャズ。
色んなジャンルの曲を沢山聴くようになった。

他にも指揮者はどういうことを意識しないといけないのかネットでわかるものは全て調べノートにまとめた。
 
そして楽譜を全て把握するために全パートにマーカーをつけて、どんな構成になっているのかどんな背景で書かれたものなのか。演奏する全楽曲夜通し聴き漁った。

そしてその時、初めて涼介の担当であるドラムの音を知ることになる。

指揮者になってから、各楽器ごとに練習する時間に今まで知らなかった他の楽器の練習の様子を見に行くことが増えた。

各楽器ごとに色が様々だった。
喧嘩中で空気の悪い部屋、黙々と練習している部屋、お菓子パーティーが始まっている部屋。
自分の楽器の世界しか知らなかった私にとって衝撃的だった。
 
ただ、どんな雰囲気でも直すべき点など言うことは言わないといけない。

言葉を必死に選びながらまわっていた。

涼介の担当のパーカッション部屋も例外ではなかった。
涼介のドラムの姿に憧れた後輩が数人入部してきたからだ。確かに涼介はドラムは上手だったし、気取っていないクールさが大人っぽくも見えた。

そんな涼介に少しでも話そうとすると、後輩に強い目で見られることがあった。

だから必要なこと以外は話さない。
そう割り切っていた。

こんな状況であることもあり、全体で音を合わせをした時はすごく頭を抱えたのを覚えている。
 
音は揃ってない、言わば不協和音。
音というものは正直で、人間関係がそのまま現れていた。




「あの時はよくやっていたよなぁ……」
私はイラストを描く手を止めて頬杖を着き、天井を見上げた。

 
そんな部活でもコンクールに出ていた。
年に2回、前回は1番下の銅賞だった。

でも最後くらいは少しでも良い結果を出したい。
せっかくやるからには頑張りたかった。

ならば、音を揃えるためにはまず人間関係から。
そう思い一人一人と話をして、悩みを聞いたり、どうして行きたいか聞いたり。
音楽以外でも自分のできることは全てやった。

夜遅くまで話をして、家に帰ってからも改善策を色々考えて……とにかく必死だった。



ただ、



コンクール当日のことは正直覚えていない。  
いや、もしかしたら思い出したくないのかもしれない。

 
結果としては


銀賞だった。

 



前の賞よりは良い賞だった。

少しでも変えることができた…

やっと終わる…
そう思った矢先の話。