"みなも"みたいな恋だった

お気に入りのカップに紅茶のパックをいれ、お湯を注ぐ。キッチンから自分の部屋までこぼれないようにゆっくり持っていく。

部屋の机の上の電気をつけ、椅子に座る。
机の隣の窓からは星が1つ2つと見えた。

「「涼介様。お世話になります。イラストレーターの奏音です。この度はミュージックMVの挿絵のご依頼ありがとうございます……」」

私はパソコンでカタカタと文字を打つ。
もう一度読み直してdeleteボタンを連打して、再度キーボードを打つ。

「「涼介、久しぶり。高校ぶりだね。元気にしてる?こんな形でまた一緒に話ができるなんて思ってなかったよ。」」

大人になった私は今、イラストレーターをしている。
DMに来ていたミュージックMVの挿絵のご依頼。
相手は中学生の時の彼氏だった。

「「イラストレーターしてるって知ってびっくりだったよ」」

返信がすぐ届いた。
 
「「まだ音楽続けているんだね」」

涼介とは中学の部活で同じ吹奏楽部だった。
私が指揮者とサックス担当。
彼はドラムやパーカッション全体の担当をしていた。

中学を卒業してから、私は楽器を辞めてしまったが、涼介は高校生になってバンドを組んでいた。

大人になるまで続けていたんだという安心感。
そして数年ぶりにまた連絡があったという驚き。

なんという神様の巡り合わせだろうか。



私は少し冷ましてから1口だけ紅茶を飲んだ。


デモ音源と構成をリモートで打ち合わせした後、私はイラスト制作に取り掛かる。

「懐かしいな……。」
私はまた星空を見た。


あれは中学2年生の秋だっけ……。