"みなも"みたいな恋だった

ついに桜が咲く季節になった。
私たちは中学を卒業する。

体育館で卒業式を終えたあと、学校内を散策した。
ウトウトしながら授業を受けた教室。

委員会で使った視聴覚室に悩み相談をよく聞いた廊下の曲がった角の謎のスペース。

かくれんぼした下駄箱。
そして部室の音楽室。

辛いことも多かったけれど今となってはどれも忘れたくない思い出だ。

卒業アルバムの裏に寄せ書きを貰う。
流れ作業のようにアルバムが次の人へ次の人へと渡っていく。

クラスの友達や先生、部活の同級生に後輩。
いつの間にか白いページが無くなる程になっていた。

この日は寄せ書きを貰ったあと、すぐに家へ帰った。
私たちが付き合ってることをお互いに両親に言ってなかったので、この日はバレないように涼介とはほぼ話をしなかった。

家に帰って少し落ち着いたあと、アルバムを見返す。
クラス写真の後に、部活や運動会、文化祭の写真。

そして最後のページには寄せ書きがびっしりと。

寄せ書きを書いてくれた一人一人の顔を思い浮かべながら、ひとつずつ丁寧に見ていく。

「また会おうね」「部活お疲れ様」「先輩また部活来てくださいね」そんな言葉が並ぶ。

「私ってこう思われてたんだな。」
誰かの記憶の中に自分の姿が少しでも残っているんだと思うと、自分を誇らしく感じることができた。

中にはこんな言葉も残っていた。 
「話聞いてくれてありがとう」「奏音がいてくれて良かったよ」

そんな言葉を見た瞬間、
私の中で暗闇だった世界に光が数多に輝き出す。

涼介が言ってた、「見てる人は見てるから」その言葉は本当だった。
 
「あっ。」

寄せ書きの右下の片隅に涼介のメッセージが一言書かれていた。

「これからもよろしく。涼介」

私はプスっと1人笑った。

「私と同じじゃん…。」

1目見るだけじゃ分からない言葉を私も選んだ。
お互い「らしい」言葉だった。