"みなも"みたいな恋だった

夕日が傾き、誰もいない教室に静かに日が差す。
教室には涼介が先に待っていた。

「おまたせ。学校で話すの久しぶりだね。」

私は窓の外を見ながら言った。
耳を澄ますと、校歌を演奏する音が聴こえた。


「前より音が揃ってる……。」

「顧問が本気出してるらしいよ。」


後で聞いた話だが、昔顧問と先輩たちと口論になって、それで顧問が部活を見放してしまったらしい。
元々は全国大会へ連れて行けるような有能者だったとか。

そして先輩達をあまり知らない代になったら戻ってくるつもりだった…と。


「俺たちの時に来てくれればねぇ…。」

涼介はボソッと呟いた。

「いい先輩にはなれなかったから、音楽嫌いにならないといいな…。」

私はそう言って、窓によりかかり、目を瞑りながら音を聴く。
まだ全てでは無いけど、少しづつ音を聴けるようになり始めていた。

「いい先輩だったよ。見てる人は見てるから。」

涼介は言う。

私は涼介を見た。

ちゃんと言おう。

そう決めて1度深呼吸をする。


「本題なんだけどね、答えを言いたくて。」


涼介は頷きながら私の話を聞く。


「色々考えた。最初は部員の中のひとりで、自分の周りのことで精一杯で。でも、告白してくれたあの日から話すようになって。話すと安心して。」

「一生懸命やってたことに意味があったんだって思えた。自分のやってきたことに自信を持っていいんだって。」

「いつの間にか、友人じゃなくて恋人として一緒にいたいって思った。」


「……私も涼介が好きみたい。」

私は少し照れながら言った。

 
「俺も頑張ってる奏音が好きだよ。付き合ってくれますか。」

涼介は優しく笑いながら言う。

私はコクリとうなづいた。


その後私たちは静かに教室で後輩の音を聴いていた。
カーテンが揺れる。空には夕焼け雲があった。