"みなも"みたいな恋だった

3年生の夏休み。
私は久しぶりにサックスを手に取る。

チューニングをした後、楽譜を置く。
 

今日はどんな音を出してもいい。
どれだけデタラメでもまとまっててもいい。
何も考えるな。

自分にそう言い聞かせて、外部の先生の指揮棒を見る。


振りかざされた瞬間音を出す。


自分の音はいつもより強い音だった。
周りの音にモヤがかかってしまい、自分の音だけが響くような感覚。

まるで独奏しているようだった。


最初からこうしていればよかったのかな…
何も考えずにやっていればこんな思いもしなかったのかもしれない。

今までの出来事が次々に頭の中で並べられていく。

見るで薄暗い展示会にひとりで来ているような感覚だった。
飾られている日々は全てモノクロに色褪せていく。



気づけば演奏は終わっていた。