春、煙のむこうで

 春が過ぎても、僕らは連絡を取り合った。

 遥は就職活動の愚痴をこぼし、僕は梢の何気ない仕草について相談した。
「彼女、誰にでも優しいんですよ」
「直樹さんもそうです。私だけ特別って思いたいけど、違うんです」

 電話越しに笑い合いながら、同じことを言っていた。

 会う口実は『相談』だった。
 ランチ、映画、マリにも顔をだした。

 会えば近況を話し、別れ際に「また報告しましょうね」と言い合う。

 そうしているうちに、僕は彼女のことをよく知っていた。
 好きな作家、紅茶の銘柄、休日の過ごし方。

 とても親しい友人、いつの間にか、お互いがそうなっていた。
 お互い、別の人を見ているはずだったから。