春、煙のむこうで

 三年目の春。
 遥は大学四年になっていた。
 就職も決まり、落ち着いた表情をしている。

 梢と直樹のあいだには、軽い冗談のような親密さが漂っていた。
 それを見て、遥が言った。

「最近、仲いいんですよね、あの二人」
「まあ、そうだな」
 僕は曖昧に返しながら、トングを動かした。

「でも、私、まだ諦めませんから」
「なにを?」
「直樹さんですよ。笑わないでくださいね」
「笑わないさ。俺だって、梢さんが好きだから」

 彼女は目を丸くしたあと、照れくさそうに笑った。
「じゃあ、同盟ですね。お互い、頑張りましょう」
「ああ、お互いそれぞれと仲がいいんだし、約束をとりもったり、協力していこう」

 グラスが触れ、金属の音が夜に溶けた。
 煙の向こうで、梢が直樹に酒を注いでいる。
 桜の花びらが一枚、炭の上で燃えた。