しばらく歩いた先、赤色の宝石みたいないちごがたくさん並んでいて、私は思わず足を止めた。
毎年食べているいちご飴。声をかけようと前を向くと、みんなはそれぞれ楽しそうに会話をしている。
今年は、食べられそうにないな。名残惜しい気持ちで視線を流し、私はもう一度前を向いた。
そのすぐ隣の屋台で、みんなは足を止めていた。水の張られた大きな桶の中で、赤や橙の影がゆらゆらと揺れている。
「紗夏、どうする?」
悠里の視線に静かに首を振ると、彼女は慣れたように微笑んで背を向けた。
慣れない人がいるところで、何かをやる側に立つのは、どうにも苦手で緊張してしまう。
私は少し下がって、しゃがみ込んだみんなの背中を見つめた。
目に留まったのは、莉子と話していた明るい髪の男の子だった。彼は、金魚すくいが得意なようで、揺れていた影が、吸い寄せられるみたいに集まっていく。次々と、赤い影がすくい上げられていくのは不思議だった。
「すご……」
思わずそんな言葉がこぼれ落ちて、振り返った彼の瞳が私を捉えた。
ぱちっと視線があった瞬間に、吊り上がっていて少し怖かったはずの目が細くなって、それまでの印象をあっさりと塗り替える。
「紗夏ちゃんは、やらねーの?」
破れ切ったポイを捨てて立ち上がった彼は、軽く顎で桶を示しながら笑った。
「……私は、大丈夫です」
「そっか」
それきり会話はなかったけれど、隣にある気配が落ち着かなくてうまく息ができないまま、私はただ視線を落とした。
河川敷へと降りていく途中、川より一段だけ高く作られた石の道に、私たちは並んで座った。
地元の祭りとはいえ、一等地の橋の上はすでに人で埋まっていて、少し歩いて、ようやく見つけた場所。
私は、みんなが並ぶ一番端っこに座り、息をつく。野々の隣に座ることができて、ホッとしていた。
石段から足をぶら下げると、すぐ下を草の匂いを含んだ風が流れていく。下駄で締め付けられていた足が解放されて、心地よいだるさが足先に広がった。
やがて、夜の空気を裂くように、ひとつ目の花火が上がった。
ドンと地響きにも似た音がして、目の前いっぱいに光が開く。
その大きさに、思わず、息を呑んだ。
見慣れていたはずの花火なのに、橋の上から見るそれよりも、ずっと近くて、ずっと大きい。色も、音も、胸の奥まで届いてくるみたいな景色に、思わず口を開けたまま固まっていた。
「たまや〜〜〜!」
男子たちの大きな声に、びくっと肩が揺れる。けれど、楽しそうなその姿に、思わず笑ってしまった。
夜空に咲いた光が、ゆっくりとほどけて、その残り火が水面に落ちていく。
同じ空間にいる人が、花火大会全体を盛り上げるように声を上げ、笑い声が伝染していく。
いつもとは違う、賑やかな世界は落ち着かないはずなのに。
こんなふうに過ごす夜も、たまには悪くないのかもしれないと、気付けばそう思っていた。
毎年食べているいちご飴。声をかけようと前を向くと、みんなはそれぞれ楽しそうに会話をしている。
今年は、食べられそうにないな。名残惜しい気持ちで視線を流し、私はもう一度前を向いた。
そのすぐ隣の屋台で、みんなは足を止めていた。水の張られた大きな桶の中で、赤や橙の影がゆらゆらと揺れている。
「紗夏、どうする?」
悠里の視線に静かに首を振ると、彼女は慣れたように微笑んで背を向けた。
慣れない人がいるところで、何かをやる側に立つのは、どうにも苦手で緊張してしまう。
私は少し下がって、しゃがみ込んだみんなの背中を見つめた。
目に留まったのは、莉子と話していた明るい髪の男の子だった。彼は、金魚すくいが得意なようで、揺れていた影が、吸い寄せられるみたいに集まっていく。次々と、赤い影がすくい上げられていくのは不思議だった。
「すご……」
思わずそんな言葉がこぼれ落ちて、振り返った彼の瞳が私を捉えた。
ぱちっと視線があった瞬間に、吊り上がっていて少し怖かったはずの目が細くなって、それまでの印象をあっさりと塗り替える。
「紗夏ちゃんは、やらねーの?」
破れ切ったポイを捨てて立ち上がった彼は、軽く顎で桶を示しながら笑った。
「……私は、大丈夫です」
「そっか」
それきり会話はなかったけれど、隣にある気配が落ち着かなくてうまく息ができないまま、私はただ視線を落とした。
河川敷へと降りていく途中、川より一段だけ高く作られた石の道に、私たちは並んで座った。
地元の祭りとはいえ、一等地の橋の上はすでに人で埋まっていて、少し歩いて、ようやく見つけた場所。
私は、みんなが並ぶ一番端っこに座り、息をつく。野々の隣に座ることができて、ホッとしていた。
石段から足をぶら下げると、すぐ下を草の匂いを含んだ風が流れていく。下駄で締め付けられていた足が解放されて、心地よいだるさが足先に広がった。
やがて、夜の空気を裂くように、ひとつ目の花火が上がった。
ドンと地響きにも似た音がして、目の前いっぱいに光が開く。
その大きさに、思わず、息を呑んだ。
見慣れていたはずの花火なのに、橋の上から見るそれよりも、ずっと近くて、ずっと大きい。色も、音も、胸の奥まで届いてくるみたいな景色に、思わず口を開けたまま固まっていた。
「たまや〜〜〜!」
男子たちの大きな声に、びくっと肩が揺れる。けれど、楽しそうなその姿に、思わず笑ってしまった。
夜空に咲いた光が、ゆっくりとほどけて、その残り火が水面に落ちていく。
同じ空間にいる人が、花火大会全体を盛り上げるように声を上げ、笑い声が伝染していく。
いつもとは違う、賑やかな世界は落ち着かないはずなのに。
こんなふうに過ごす夜も、たまには悪くないのかもしれないと、気付けばそう思っていた。



