昼前で終わった教室は、どこか浮き足立っていた。椅子を引く音や、笑い声があちこちで弾けて、テストが終わった解放感が、教室中に広がっている。
もちろん私も例外ではなく、鼻歌混じりにロッカーの前にしゃがみ込んで、長らく持ち帰っていた教科書をカバンから取り出した。
几帳面に教科ごとに整理して並べていたとき、頭上から聞き慣れた声が落とされる。
「テストも終わりだな」
いつの間にかすぐ隣に立っていた壱生くんに、私は鼻歌をぴたりとやめて顔をあげた。
「……だね。おつかれさま」
前みたいに、固まって何も言えなくなることはもうないけれど、近くにいると高鳴る胸は、変わっていない。
上から落ちる視線に意識が向く。次の瞬間、寄り添うようにして隣にしゃがんだ彼の手が、ふっと、耳元に添えられた。
視界が一瞬だけ遮られて、驚いている間に、甘い一言が落とされる。
「好きだよ」
息が、止まった。
すぐに立ち上がった彼に、視界は開けていつも通りの教室が広がっていく。
放課後の賑やかな教室の音が、はっきりと聞こえているのに、それでもどこか遠い世界に感じる不思議な感覚が体を巡っていた。
何が起きたのか理解するより先に、顔だけが、熱を持っていく。
「からかうの、やめてって……」
やっとのことでこぼれた声は、自分でも分かるくらい小さくて、震えていた。
「壱生、帰ろうぜ〜!」
離れたところから、飛ぶ声に、その緊張感はふっと緩む。
「おー!」
何事もなかったみたいに返事をする彼は、私に背を向けて数歩歩いたあと、ふと振り返った。視線が交わって、またどくんと大きく音を立てる胸を抑える。
「ちゃんと、本気だから」
短くそれだけ言って、彼はいつもの笑顔を浮かべた。
「じゃあ、またね」
残された私は、その場にしゃがみ込んだまま動けなかった。
ゆっくりと、腰が抜けるように地面に座り込み、両手で顔を覆う。
熱がなかなか引かなかった。
耳元で囁かれた声が、何度も頭の中に鳴り響く。
……そんなわけ、ないのに。
壱生くんが、私を好きなんて、そんなこと、あるはずないのに。
もちろん私も例外ではなく、鼻歌混じりにロッカーの前にしゃがみ込んで、長らく持ち帰っていた教科書をカバンから取り出した。
几帳面に教科ごとに整理して並べていたとき、頭上から聞き慣れた声が落とされる。
「テストも終わりだな」
いつの間にかすぐ隣に立っていた壱生くんに、私は鼻歌をぴたりとやめて顔をあげた。
「……だね。おつかれさま」
前みたいに、固まって何も言えなくなることはもうないけれど、近くにいると高鳴る胸は、変わっていない。
上から落ちる視線に意識が向く。次の瞬間、寄り添うようにして隣にしゃがんだ彼の手が、ふっと、耳元に添えられた。
視界が一瞬だけ遮られて、驚いている間に、甘い一言が落とされる。
「好きだよ」
息が、止まった。
すぐに立ち上がった彼に、視界は開けていつも通りの教室が広がっていく。
放課後の賑やかな教室の音が、はっきりと聞こえているのに、それでもどこか遠い世界に感じる不思議な感覚が体を巡っていた。
何が起きたのか理解するより先に、顔だけが、熱を持っていく。
「からかうの、やめてって……」
やっとのことでこぼれた声は、自分でも分かるくらい小さくて、震えていた。
「壱生、帰ろうぜ〜!」
離れたところから、飛ぶ声に、その緊張感はふっと緩む。
「おー!」
何事もなかったみたいに返事をする彼は、私に背を向けて数歩歩いたあと、ふと振り返った。視線が交わって、またどくんと大きく音を立てる胸を抑える。
「ちゃんと、本気だから」
短くそれだけ言って、彼はいつもの笑顔を浮かべた。
「じゃあ、またね」
残された私は、その場にしゃがみ込んだまま動けなかった。
ゆっくりと、腰が抜けるように地面に座り込み、両手で顔を覆う。
熱がなかなか引かなかった。
耳元で囁かれた声が、何度も頭の中に鳴り響く。
……そんなわけ、ないのに。
壱生くんが、私を好きなんて、そんなこと、あるはずないのに。



