* * *
あれから十年が経った。
今日は大学の同窓会。
学生時代の仲間たちに久しぶりに会える。
会場で私はゼミの仲間たちと再会した。
貴矢くんもいた。渋みが加わって、一層男前になっていた。
私は声をかける。
「貴矢くん、お久しぶり!」
「志保、すっかり主婦らしくなったな」
「そうでしょ? 二児の母だからね。貴矢くんは?」
「先月、パパになったよ」
お互い、我が子の写真を見せ合う。二人とも、親バカの顔になっていた。
あの後、私は職場の男性と結婚した。
貴矢くんも、いつの間にか結婚していた。
貴矢くんは懐かしそうな顔で私に訊いた。
「卒論発表会の前、俺が車で送ったときのこと、覚えてるか?」
「うん。覚えているよ。あの時は送ってくれてありがとう」
「俺さ、まぁ、今だから笑い話みたいにして言えるけどさ、まぁ、なんだその……実は、志保に告白しようとか思っていたんだ」
「え? そうだったの?!」
私は動揺を隠せなかった。
「で、なんで告白しなかったの?」
「車見てさ、志保、がっかりしただろ? あと、乗るとき、顔をしかめていたよな。タバコの匂い、苦手だったんだろ?」
「うふふ……私、顔に出てたんだ」
「うん。それで、今は告白のタイミングじゃないな、って思ってさ。ベストの状況作ってから告白しようと思っているうちに卒業だもんな」
「あら、そうだったんだ……こんな言葉、あるよね。『チャンスは最悪のタイミングでやってくる』って」
「あぁ、知ってる。ジョセフ・マーフィーの言葉だろ?」
「うん」
貴矢くんも、私と似た体験をしていたんだ……
「働くようになってから、憧れの車を買ったよ。毎日磨いてたんだぜ。それでさ、偶然、コンビニの前で志保に会った。覚えてるか?」
「覚えてる」
忘れもしないよ、あの日のことは……
「志保、ものすごい勢いで走っていなくなって、言いたかったこと、何も言えなかったぞ」
「あはは……あの時、急いでいたからね」
実際のところは、風呂上がりですっぴん、ラフな服装だったので、恥ずかしくて逃げ出したのだった。
「走って逃げていく志保を見て、あぁ、俺には興味がないんだな……って分かったよ」
「あの時は急いでいただけ。別に貴矢くんのこと、興味なかったわけじゃないよ」
むしろ、私は貴矢くんを意識しすぎていた。
だから逃げ出した。
「俺さ、この大学に行けて良かったって後になってから思えた。この大学に行く運命だったんだ、って。志保のこともさ、結局、縁がなかったのは残念だったけど、そういう運命が初めから決まっていたのなら仕方ない……そう自分に言い聞かせた」
私は、あえてふざけて言ってみせた。
「あら、もったいない。私の連絡先、知ってたんでしょ? いつでも呼び出して告白すればよかったじゃない?」
「なんかさ、運命を感じたかったんだよ。この車に乗っているとき、いつかどこかで偶然、志保に会う。そんなことがあれば、それが運命なのかなって」
「ドラマや映画じゃないんだからさ、貴矢くん、夢を見すぎだよ」
私はそう言って笑った。けれど……
私だって正直に言えば、夢を見ていた。
いつかどこかで、ばったり貴矢くんに会って、その時、ステキに変身した私を見せて驚かせるんだって……
私、貴矢くんのこと、本当は笑えない……
「私達はさ、すれ違う運命だったんだよ」
「ま、そういうことかもな」
「貴矢くんさ、もう一回、赤ちゃんの顔、見せて」
「いいぞ。志保のも見せてくれよ」
お互いの子供の写真を再び見せ合った。
写真の赤ちゃんの顔も、そして、それを見る自分たちの顔も、とっても幸せそう。
「これが、私達の運命」
「そうだな。これが俺たちの運命だ」
顔を見合わせて笑った。
貴矢くんとは付き合う運命ではなかったけど、私には今、素敵なパートナーとかわいい子供たちがいる。
それは、貴矢くんも同じだろう。
あれから十年が経った。
今日は大学の同窓会。
学生時代の仲間たちに久しぶりに会える。
会場で私はゼミの仲間たちと再会した。
貴矢くんもいた。渋みが加わって、一層男前になっていた。
私は声をかける。
「貴矢くん、お久しぶり!」
「志保、すっかり主婦らしくなったな」
「そうでしょ? 二児の母だからね。貴矢くんは?」
「先月、パパになったよ」
お互い、我が子の写真を見せ合う。二人とも、親バカの顔になっていた。
あの後、私は職場の男性と結婚した。
貴矢くんも、いつの間にか結婚していた。
貴矢くんは懐かしそうな顔で私に訊いた。
「卒論発表会の前、俺が車で送ったときのこと、覚えてるか?」
「うん。覚えているよ。あの時は送ってくれてありがとう」
「俺さ、まぁ、今だから笑い話みたいにして言えるけどさ、まぁ、なんだその……実は、志保に告白しようとか思っていたんだ」
「え? そうだったの?!」
私は動揺を隠せなかった。
「で、なんで告白しなかったの?」
「車見てさ、志保、がっかりしただろ? あと、乗るとき、顔をしかめていたよな。タバコの匂い、苦手だったんだろ?」
「うふふ……私、顔に出てたんだ」
「うん。それで、今は告白のタイミングじゃないな、って思ってさ。ベストの状況作ってから告白しようと思っているうちに卒業だもんな」
「あら、そうだったんだ……こんな言葉、あるよね。『チャンスは最悪のタイミングでやってくる』って」
「あぁ、知ってる。ジョセフ・マーフィーの言葉だろ?」
「うん」
貴矢くんも、私と似た体験をしていたんだ……
「働くようになってから、憧れの車を買ったよ。毎日磨いてたんだぜ。それでさ、偶然、コンビニの前で志保に会った。覚えてるか?」
「覚えてる」
忘れもしないよ、あの日のことは……
「志保、ものすごい勢いで走っていなくなって、言いたかったこと、何も言えなかったぞ」
「あはは……あの時、急いでいたからね」
実際のところは、風呂上がりですっぴん、ラフな服装だったので、恥ずかしくて逃げ出したのだった。
「走って逃げていく志保を見て、あぁ、俺には興味がないんだな……って分かったよ」
「あの時は急いでいただけ。別に貴矢くんのこと、興味なかったわけじゃないよ」
むしろ、私は貴矢くんを意識しすぎていた。
だから逃げ出した。
「俺さ、この大学に行けて良かったって後になってから思えた。この大学に行く運命だったんだ、って。志保のこともさ、結局、縁がなかったのは残念だったけど、そういう運命が初めから決まっていたのなら仕方ない……そう自分に言い聞かせた」
私は、あえてふざけて言ってみせた。
「あら、もったいない。私の連絡先、知ってたんでしょ? いつでも呼び出して告白すればよかったじゃない?」
「なんかさ、運命を感じたかったんだよ。この車に乗っているとき、いつかどこかで偶然、志保に会う。そんなことがあれば、それが運命なのかなって」
「ドラマや映画じゃないんだからさ、貴矢くん、夢を見すぎだよ」
私はそう言って笑った。けれど……
私だって正直に言えば、夢を見ていた。
いつかどこかで、ばったり貴矢くんに会って、その時、ステキに変身した私を見せて驚かせるんだって……
私、貴矢くんのこと、本当は笑えない……
「私達はさ、すれ違う運命だったんだよ」
「ま、そういうことかもな」
「貴矢くんさ、もう一回、赤ちゃんの顔、見せて」
「いいぞ。志保のも見せてくれよ」
お互いの子供の写真を再び見せ合った。
写真の赤ちゃんの顔も、そして、それを見る自分たちの顔も、とっても幸せそう。
「これが、私達の運命」
「そうだな。これが俺たちの運命だ」
顔を見合わせて笑った。
貴矢くんとは付き合う運命ではなかったけど、私には今、素敵なパートナーとかわいい子供たちがいる。
それは、貴矢くんも同じだろう。



