私は呟いた。
「もうすぐ卒業だね」
「そうだな……」
車のエアコンが淡々と、私たち二人の間の空気をかき混ぜていた。
そして、不意に貴矢くんは言った。
「志保はこの大学、第一志望だった?」
「え? そうだよ。ちょっと遠いけど、家から通えるし……」
「そっか……俺はもっと都会の大学に行きたかった」
それを聞いた瞬間、車内の空気の温度がほんの少しだけ上がったような気がした。
「入学してすぐの頃は、別の大学を受け直そうかなって思ってた。でもさ、卒業を前にして、今はこの大学で良かったって、そう思ってる」
「うん。私もこの大学、好きだよ」
「志保はさ、運命は生まれたときから決まっているって思う?」
「なにそれ?」
「俺さ、小さい頃から都会の大学に行きたいって思ってた。でも叶わなくて、地元の大学に入った。もしもあの時、都会の大学を受験していれば……なんて考えたこともあった。でも、この運命って初めから決まってたのかもな」
運命、という言葉が車内の天井に浮かび、ゆっくり降りてきて私の膝に乗ってきた。
「う~ん、どうだろうね」
「受験をやり直したいって何度も思った。でも……もしもあの時、なんて考えてもしようがない、この大学に入る運命は初めから決まってたんだって、最近はそう思えるようになったんだ」
「運命……」
「ゼミの仲間と研究したのも楽しかったし、出会いも運命だったと思える。みんないいやつだし……」
「うん。私もこの研究室に入れてよかったって思っているよ」
車は赤信号で止まった。
カ チ カ チ カ チ カ チ ……
夜の静けさの中で、ウインカーの音だけが細く跳ねている。
その音だけが世界の中心になっていく。
貴矢くんは、このあと何を言うつもりなんだろう。
私はまた、妄想の渦の中にいた。
行きたかった大学には行けず、この大学に流れついて、それを“運命”と受け入れた貴矢くん。ゼミの仲間と出会えたことも運命だったと言い切った貴矢くん。
それなら……
私と出会えたことだって、運命のひとつに、そっと入れてくれているのかも。
この後、貴矢くんは私に告白するのかもしれない。
そんな期待のかけらが胸の奥で転がり、貴矢くんの次の言葉を、私は息をつめて待ち続けた。
カ チ カ チ カ チ カ チ ……
貴矢くんは黙ったまま。
ウインカーの音が、妙に心臓の鼓動と重なって、私をどきどきさせ続けた。
「もうすぐ卒業だね」
「そうだな……」
車のエアコンが淡々と、私たち二人の間の空気をかき混ぜていた。
そして、不意に貴矢くんは言った。
「志保はこの大学、第一志望だった?」
「え? そうだよ。ちょっと遠いけど、家から通えるし……」
「そっか……俺はもっと都会の大学に行きたかった」
それを聞いた瞬間、車内の空気の温度がほんの少しだけ上がったような気がした。
「入学してすぐの頃は、別の大学を受け直そうかなって思ってた。でもさ、卒業を前にして、今はこの大学で良かったって、そう思ってる」
「うん。私もこの大学、好きだよ」
「志保はさ、運命は生まれたときから決まっているって思う?」
「なにそれ?」
「俺さ、小さい頃から都会の大学に行きたいって思ってた。でも叶わなくて、地元の大学に入った。もしもあの時、都会の大学を受験していれば……なんて考えたこともあった。でも、この運命って初めから決まってたのかもな」
運命、という言葉が車内の天井に浮かび、ゆっくり降りてきて私の膝に乗ってきた。
「う~ん、どうだろうね」
「受験をやり直したいって何度も思った。でも……もしもあの時、なんて考えてもしようがない、この大学に入る運命は初めから決まってたんだって、最近はそう思えるようになったんだ」
「運命……」
「ゼミの仲間と研究したのも楽しかったし、出会いも運命だったと思える。みんないいやつだし……」
「うん。私もこの研究室に入れてよかったって思っているよ」
車は赤信号で止まった。
カ チ カ チ カ チ カ チ ……
夜の静けさの中で、ウインカーの音だけが細く跳ねている。
その音だけが世界の中心になっていく。
貴矢くんは、このあと何を言うつもりなんだろう。
私はまた、妄想の渦の中にいた。
行きたかった大学には行けず、この大学に流れついて、それを“運命”と受け入れた貴矢くん。ゼミの仲間と出会えたことも運命だったと言い切った貴矢くん。
それなら……
私と出会えたことだって、運命のひとつに、そっと入れてくれているのかも。
この後、貴矢くんは私に告白するのかもしれない。
そんな期待のかけらが胸の奥で転がり、貴矢くんの次の言葉を、私は息をつめて待ち続けた。
カ チ カ チ カ チ カ チ ……
貴矢くんは黙ったまま。
ウインカーの音が、妙に心臓の鼓動と重なって、私をどきどきさせ続けた。



