真白を挟んだ向こう側にいる悠真もまた、真剣な眼差しを向けつつ微笑んでいた。
「……もし、貴方が本当に化け物だったとしても」
そこで一度言葉を切り、音羽の手中の紙を取り上げると筆を走らせる。
紙を覗き込んだ音羽は、はっと息を呑んだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺は貴方を置いて行かない
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
部屋が静まり返る。
悠真には、真白が紙に書いた内容を知る由はない。けれど、音羽の反応を見れば、何も言うことはなかった。
音羽は呆然と真白を今にも泣き出しそうな顔で見つめる。嬉しいのか、苦しいのか、自分でも分からない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
なんで そんなこといえるの
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
声になんてならないはずなのに、音羽は紙に記したこと以上の想いを必死に言葉にしようとした。
何度も口を開けては閉じてを繰り返す様子を見て、真白は深く息を吐く。
「知りませんよ」
気怠げな声が静かな部屋の中に溶けて消えた。
「でも、姫様一人に全部背負わせるのは違うでしょう」
その言葉はあまりにも真っ直ぐだった。だからこそ、音羽は耐えられない。
こんな状況なのに、こんな呪いの塊みたいな自分なのに、まだ救おうとしてくれる。まだ隣に立とうとしてくれる。
「……っ」
音羽は俯き、膝の上へぽたりと雫が落ちるのを眺めた。
真白はそれ以上何も言わず、ただ静かに目の前に膝をついて目線を合わせる。
「で、どうやって夜鷹に接触するんです?」
しばらくして、空気を切り替えるように悠真が口を開いた。
真白は小さく舌打ちをすると、テーブルの上の資料に目を向ける。
過去に起きた妖関連の事件と橘家の歴史を睨め付けながら、溜息を吐くように呟く。
「……そこなんですよねぇ」
夜鷹は妖だ。しかも、十五年前の異常活性に関わっていた可能性が高い。
簡単に尻尾を掴ませる相手じゃない。
下手をすれば、こちらが近づいた瞬間に消える。
「一応、方法はありますよ」
悠真が静かに一枚の紙を机へ置いた。それは、古びた地図。
「異常活性の発生地点です」
赤い印が幾つも記されているその中心に、全ての線が交差する場所があった。
辺りの地形とよく知る町並みを照らし合わせると、そこは人が寄り付こうとしない山奥。
「ここだけ、妙なんですよ」
「妙?」
「結界濃度が異常に高い。なのに、術者側の管理記録が存在しない」
つまり、誰にも知られていない隠匿領域ということ。
そこに何かがあるのは明白だ。
悠真は静かに音羽を見ると、敢えて分かりきっていることを言い聞かせる。
「恐らく、貴方の両親はそこにいます」
音羽の肩がびくりと揺れた。
真白は地図を睨みつけたまま、小さく息を吐く。
「行きましょう」
いつの日からか、真白の人柄は変わった。きっと出会ったばかりの彼であれば、こんなにも真剣な目を向けて来ることなんて無かった。
だからこそ、その瞳に偽りはないのだと思える。
そして何より、真白がいるから、悠真も来てくれるから、怖いものなんて無かった。
音羽は真白の目を見つめ返して、強く頷いた。
「……もし、貴方が本当に化け物だったとしても」
そこで一度言葉を切り、音羽の手中の紙を取り上げると筆を走らせる。
紙を覗き込んだ音羽は、はっと息を呑んだ。
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俺は貴方を置いて行かない
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部屋が静まり返る。
悠真には、真白が紙に書いた内容を知る由はない。けれど、音羽の反応を見れば、何も言うことはなかった。
音羽は呆然と真白を今にも泣き出しそうな顔で見つめる。嬉しいのか、苦しいのか、自分でも分からない。
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なんで そんなこといえるの
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声になんてならないはずなのに、音羽は紙に記したこと以上の想いを必死に言葉にしようとした。
何度も口を開けては閉じてを繰り返す様子を見て、真白は深く息を吐く。
「知りませんよ」
気怠げな声が静かな部屋の中に溶けて消えた。
「でも、姫様一人に全部背負わせるのは違うでしょう」
その言葉はあまりにも真っ直ぐだった。だからこそ、音羽は耐えられない。
こんな状況なのに、こんな呪いの塊みたいな自分なのに、まだ救おうとしてくれる。まだ隣に立とうとしてくれる。
「……っ」
音羽は俯き、膝の上へぽたりと雫が落ちるのを眺めた。
真白はそれ以上何も言わず、ただ静かに目の前に膝をついて目線を合わせる。
「で、どうやって夜鷹に接触するんです?」
しばらくして、空気を切り替えるように悠真が口を開いた。
真白は小さく舌打ちをすると、テーブルの上の資料に目を向ける。
過去に起きた妖関連の事件と橘家の歴史を睨め付けながら、溜息を吐くように呟く。
「……そこなんですよねぇ」
夜鷹は妖だ。しかも、十五年前の異常活性に関わっていた可能性が高い。
簡単に尻尾を掴ませる相手じゃない。
下手をすれば、こちらが近づいた瞬間に消える。
「一応、方法はありますよ」
悠真が静かに一枚の紙を机へ置いた。それは、古びた地図。
「異常活性の発生地点です」
赤い印が幾つも記されているその中心に、全ての線が交差する場所があった。
辺りの地形とよく知る町並みを照らし合わせると、そこは人が寄り付こうとしない山奥。
「ここだけ、妙なんですよ」
「妙?」
「結界濃度が異常に高い。なのに、術者側の管理記録が存在しない」
つまり、誰にも知られていない隠匿領域ということ。
そこに何かがあるのは明白だ。
悠真は静かに音羽を見ると、敢えて分かりきっていることを言い聞かせる。
「恐らく、貴方の両親はそこにいます」
音羽の肩がびくりと揺れた。
真白は地図を睨みつけたまま、小さく息を吐く。
「行きましょう」
いつの日からか、真白の人柄は変わった。きっと出会ったばかりの彼であれば、こんなにも真剣な目を向けて来ることなんて無かった。
だからこそ、その瞳に偽りはないのだと思える。
そして何より、真白がいるから、悠真も来てくれるから、怖いものなんて無かった。
音羽は真白の目を見つめ返して、強く頷いた。

