まるで、獲物の僅かな反応すら見逃すまいとするように、ねっとりと絡み付く視線が音羽の身体を這う。
「……おや」
まるで答え合わせでもするような声音だった。
音羽ははっとしたように唇を引き結ぶ。
しまった、と思った時にはもう遅い。ほんの一瞬の反応すら、悠真は見逃していなかった。
「今、動揺しましたね」
「っ……!」
図星を突かれたように肩が震える。
誤魔化さなければ。そう思うのに、強張った身体は上手く動いてくれない。
悠真はそんな音羽の反応を楽しむように、ゆっくりと瓶を棚へ戻した。
「別に責めているわけではありませんよ」
優しい声音なのに、逃げ場を塞がれていくような息苦しさがある。
「むしろ、安心しました」
「……?」
「橘家ほどの名家が、妖と無関係なはずありませんから」
くすり、と喉を鳴らして笑う。
その笑みを見た瞬間、音羽の背筋を冷たい汗が伝った。
知られてはいけない。本能が、警鐘を鳴らしている。
けれど悠真は、そんな音羽を逃がすつもりなど初めからないように、一歩だけ距離を詰めた。
「久我の人間は、幼い頃から教え込まれるんです」
悠真は静かに棚へ指先を滑らせた。
無数の瓶。
封じられた妖。
その全てを愛おしむように眺めながら、薄く笑う。
「どれほど質の良い呪具が生まれるかは、“素材”で決まると」
「……」
「弱い妖からは弱い呪具しか生まれない。霊力の乏しい人間では、器にすらならない」
ころり、と、悠真は再び小瓶を指先で転がした。
「逆に言えば、強い霊力を持つものほど価値がある」
その瞬間、悠真の視線がゆっくりと音羽へ向けられる。
値踏みするような昏い視線が、じっと音羽から離れない。
品定めされている。そんな感覚に、音羽は無意識のうちに一歩後ずさった。
「そして僕は、陰陽術も扱える」
細い指先が、自身の胸元を軽く叩く。
誇るでもなく、淡々と告げられた言葉が静かに消えていく。
それなのに、悠真の纏う空気には確かな自負が滲んでいるようだった。
久我の嫡男。
妖を祓い、呪具を生み出し、それを扱う側の人間。
目の前にいるのは、ただ病弱なだけの少年ではない。
「呪具を作るだけではなく、扱う側でもあるということです」
穏やかな声。
誇示するでもない、ただ事実を述べるような口調。
だからこそ余計に恐ろしい。
「霊力というものには敏感でしてね」
悠真はゆっくりと音羽へ歩み寄る。
一歩。また一歩。逃げ場を削るように距離を詰めながら、細めた目で音羽を見下ろした。
「貴方がこの屋敷へ来てから、ずっと妙だと思っていたんですよ」
「……っ」
「声を失っただけの娘にしては、“気配”が濃すぎる」
どくり、と心臓が脈打つ。
悠真はそんな音羽の反応を愉しむように口角を上げた。
「だから確かめたかった」
その声音には、見合い相手へ向ける柔らかさなど欠片も残っていなかった。
あるのは純粋な興味。
未知のものを暴こうとする、昏く粘ついた執着だけ。
「橘音羽という姫君が、一体“何”なのかを」
「……おや」
まるで答え合わせでもするような声音だった。
音羽ははっとしたように唇を引き結ぶ。
しまった、と思った時にはもう遅い。ほんの一瞬の反応すら、悠真は見逃していなかった。
「今、動揺しましたね」
「っ……!」
図星を突かれたように肩が震える。
誤魔化さなければ。そう思うのに、強張った身体は上手く動いてくれない。
悠真はそんな音羽の反応を楽しむように、ゆっくりと瓶を棚へ戻した。
「別に責めているわけではありませんよ」
優しい声音なのに、逃げ場を塞がれていくような息苦しさがある。
「むしろ、安心しました」
「……?」
「橘家ほどの名家が、妖と無関係なはずありませんから」
くすり、と喉を鳴らして笑う。
その笑みを見た瞬間、音羽の背筋を冷たい汗が伝った。
知られてはいけない。本能が、警鐘を鳴らしている。
けれど悠真は、そんな音羽を逃がすつもりなど初めからないように、一歩だけ距離を詰めた。
「久我の人間は、幼い頃から教え込まれるんです」
悠真は静かに棚へ指先を滑らせた。
無数の瓶。
封じられた妖。
その全てを愛おしむように眺めながら、薄く笑う。
「どれほど質の良い呪具が生まれるかは、“素材”で決まると」
「……」
「弱い妖からは弱い呪具しか生まれない。霊力の乏しい人間では、器にすらならない」
ころり、と、悠真は再び小瓶を指先で転がした。
「逆に言えば、強い霊力を持つものほど価値がある」
その瞬間、悠真の視線がゆっくりと音羽へ向けられる。
値踏みするような昏い視線が、じっと音羽から離れない。
品定めされている。そんな感覚に、音羽は無意識のうちに一歩後ずさった。
「そして僕は、陰陽術も扱える」
細い指先が、自身の胸元を軽く叩く。
誇るでもなく、淡々と告げられた言葉が静かに消えていく。
それなのに、悠真の纏う空気には確かな自負が滲んでいるようだった。
久我の嫡男。
妖を祓い、呪具を生み出し、それを扱う側の人間。
目の前にいるのは、ただ病弱なだけの少年ではない。
「呪具を作るだけではなく、扱う側でもあるということです」
穏やかな声。
誇示するでもない、ただ事実を述べるような口調。
だからこそ余計に恐ろしい。
「霊力というものには敏感でしてね」
悠真はゆっくりと音羽へ歩み寄る。
一歩。また一歩。逃げ場を削るように距離を詰めながら、細めた目で音羽を見下ろした。
「貴方がこの屋敷へ来てから、ずっと妙だと思っていたんですよ」
「……っ」
「声を失っただけの娘にしては、“気配”が濃すぎる」
どくり、と心臓が脈打つ。
悠真はそんな音羽の反応を愉しむように口角を上げた。
「だから確かめたかった」
その声音には、見合い相手へ向ける柔らかさなど欠片も残っていなかった。
あるのは純粋な興味。
未知のものを暴こうとする、昏く粘ついた執着だけ。
「橘音羽という姫君が、一体“何”なのかを」

