影裂に止められた男は、唇を尖らせて不貞腐れた態度を見せる。その横にちょこんと座った少女も彼と同じ顔をした。
「深雪。何処まで覚えているか、教えてくれ」
「えっと、村を出てから歩いていたら骨喰さんに襲われて、血で傷を直そうとしたってところからは何も」
「そこで気絶したからな。一先ず何事もなさそうで良かった」
「私はそれからどうなったのでしょう」
一度、影裂と男は顔を見合わせると、深雪に一つずつ説明した。
まず、深雪が気絶してから、異能によって骨喰の追撃から逃れた影裂は、見知らぬ山の中の小屋に一時的に避難した。
それから雨が降ってきて雨宿りをするために山小屋に入ってきたのが、志摩誠十郎という男。今、影裂の隣で少女と戯れている。
誠十郎は医術の心得があり、貧血に効く薬を即席で作って深雪に飲ませた。未だに口の中に苦みがあるのはこれのせいである。
雨が止み、深雪をより安全な場所へと移すため、この誠十郎の自宅の一室まで来た。
ここまでが深雪が眠っている間にあったことの概要である。
「んで、こいつは俺の妹。ほら、挨拶」
誠十郎に促されて背中に隠れていた少女が顔を出す。深雪を見る目は、何処か怯えているようにも見えた。
「めい」
「めいちゃん」
「みゆきちゃん」
「えへへ、そうだよぉ。可愛いー」
ツギハギだらけの着物、無造作に伸びた髪、窶れた姿は普通ではないのに、なんだか無性に可愛らしく思える。
八人姉妹の末っ子である深雪は、妹という存在に密かな憧れを抱いていたのだ。
「命は鬼だ」
「へっ?」
両手を伸ばせば恐る恐る近づいてきて、無理矢理抱き締めれば腕を回してくる。
そんな姿が愛らしくて頭を撫でたりしているところに、影裂は容赦なく言った。
ボサボサの命の髪を撫でる深雪の手が止まる。
「俺と同じ異能を持つ鬼。幼いゆえ、力の制御ができない。お前が眠っていたのは、命の異能による影響だ」
「命は生き物を死なないようにする異能を持っとる。どんなに深手を負っていようと、致命傷だろうと、生きながらえさせるんや。代わりに、傷を癒やせんから痛みも苦しみも伴う。貧血で気絶した深雪ちゃんを危険やと無意識に判断して、異能を発動したってわけ」
影を操る影裂。骨を扱う骨喰。鬼の異能は必ず何かを司っている。
命は命を操る。だから、命。
「そう、なの?」
「……めい、わからない。いのうがなにか、よくしらない。でも、だれかがしぬ、わかる。あぶない、おもうとあたまいたい」
「調べとる内に、どういう時に異能が発動されるのか、条件とか色々分かってな。命は自覚しとらんが、異能が発動される時は決まって頭が痛くなるんやと」
「命が頭痛という代償と伴うように、俺の異能にも発動する上で代償が伴う。骨喰やその他の鬼も同じだ」
「そー。俺には教えてくれんけど」
どんなに便利な力が支えようと、その裏には力に見合った代償が伴う。
未熟な力であれば、伴う代償は軽い。しかし、命ですら生き物を死なないようにするという命を司った異能を持つため、その代償は計り知れない。
では、影裂の異能に伴う代償とは何なのだろうか。
「教えて何になる」
「これから協力していく仲なんやし、なんかあった時のためにも共有しておくのは大事やと思うけど」
「協力って何のことです?」
改めて思えば、この二人が親しげにしている理由が分からない。
どう見たって誠十郎は人間。それなのに鬼の異能について理解していて、影裂は自身が鬼であることを明かしている。
影裂が正体を明かすというのなら、それだけ二人の間には共通した何かがあるということ。
「深雪。何処まで覚えているか、教えてくれ」
「えっと、村を出てから歩いていたら骨喰さんに襲われて、血で傷を直そうとしたってところからは何も」
「そこで気絶したからな。一先ず何事もなさそうで良かった」
「私はそれからどうなったのでしょう」
一度、影裂と男は顔を見合わせると、深雪に一つずつ説明した。
まず、深雪が気絶してから、異能によって骨喰の追撃から逃れた影裂は、見知らぬ山の中の小屋に一時的に避難した。
それから雨が降ってきて雨宿りをするために山小屋に入ってきたのが、志摩誠十郎という男。今、影裂の隣で少女と戯れている。
誠十郎は医術の心得があり、貧血に効く薬を即席で作って深雪に飲ませた。未だに口の中に苦みがあるのはこれのせいである。
雨が止み、深雪をより安全な場所へと移すため、この誠十郎の自宅の一室まで来た。
ここまでが深雪が眠っている間にあったことの概要である。
「んで、こいつは俺の妹。ほら、挨拶」
誠十郎に促されて背中に隠れていた少女が顔を出す。深雪を見る目は、何処か怯えているようにも見えた。
「めい」
「めいちゃん」
「みゆきちゃん」
「えへへ、そうだよぉ。可愛いー」
ツギハギだらけの着物、無造作に伸びた髪、窶れた姿は普通ではないのに、なんだか無性に可愛らしく思える。
八人姉妹の末っ子である深雪は、妹という存在に密かな憧れを抱いていたのだ。
「命は鬼だ」
「へっ?」
両手を伸ばせば恐る恐る近づいてきて、無理矢理抱き締めれば腕を回してくる。
そんな姿が愛らしくて頭を撫でたりしているところに、影裂は容赦なく言った。
ボサボサの命の髪を撫でる深雪の手が止まる。
「俺と同じ異能を持つ鬼。幼いゆえ、力の制御ができない。お前が眠っていたのは、命の異能による影響だ」
「命は生き物を死なないようにする異能を持っとる。どんなに深手を負っていようと、致命傷だろうと、生きながらえさせるんや。代わりに、傷を癒やせんから痛みも苦しみも伴う。貧血で気絶した深雪ちゃんを危険やと無意識に判断して、異能を発動したってわけ」
影を操る影裂。骨を扱う骨喰。鬼の異能は必ず何かを司っている。
命は命を操る。だから、命。
「そう、なの?」
「……めい、わからない。いのうがなにか、よくしらない。でも、だれかがしぬ、わかる。あぶない、おもうとあたまいたい」
「調べとる内に、どういう時に異能が発動されるのか、条件とか色々分かってな。命は自覚しとらんが、異能が発動される時は決まって頭が痛くなるんやと」
「命が頭痛という代償と伴うように、俺の異能にも発動する上で代償が伴う。骨喰やその他の鬼も同じだ」
「そー。俺には教えてくれんけど」
どんなに便利な力が支えようと、その裏には力に見合った代償が伴う。
未熟な力であれば、伴う代償は軽い。しかし、命ですら生き物を死なないようにするという命を司った異能を持つため、その代償は計り知れない。
では、影裂の異能に伴う代償とは何なのだろうか。
「教えて何になる」
「これから協力していく仲なんやし、なんかあった時のためにも共有しておくのは大事やと思うけど」
「協力って何のことです?」
改めて思えば、この二人が親しげにしている理由が分からない。
どう見たって誠十郎は人間。それなのに鬼の異能について理解していて、影裂は自身が鬼であることを明かしている。
影裂が正体を明かすというのなら、それだけ二人の間には共通した何かがあるということ。

