祓えぬ巫女と喰えぬ鬼

 この世には、悪鬼羅刹、魑魅魍魎が蠢いている。
 それらを祓い、世を安寧へと導く一家が深い森の奥で息をしていた。
 
 そんな妖祓いの一家の中に、妖を祓えない落ちこぼれが一人。

「私は、無条件に妖を祓いたくはありません!」

 女しか生まれない一家の中で、彼女だけが妖を祓えず無能として生きていた。
 人を喰えぬ鬼と、妖を祓えぬ巫女が出会った時。

 それは、最初から間違いだったのだと思う。

 どちらも本来、この世にあってはならない“欠けた存在”だった。
 祓うことのできない巫女は、その役目を果たせず。
 喰らうことのできない鬼は、生きることを許されない。
 だから、本来なら出会ったその瞬間に、終わっていなければならなかった。

「……どうして、斬らない」

 あの夜、月の下で問われた言葉を今でも覚えている。
 答えられなかったのは、言葉が見つからなかったからではない。

 分かってしまったからだ。
 斬れない理由を。

 知ってしまったからだ。
 喰えない理由を。

 あの出会いが、全ての始まりだった。