放課後、探偵研究部の部室に、未知がいた。
「これでいいですか?」
未知は、入部申込書を書き上げると、小川に差し出した。そこには、「有栖川美知」という本名が記されていた。
小川が申込書を受け取ると、トントンとノックの音がした。入ってきたのは、生徒会長のマタロウだった。
「へっへー、もう入部届書いてもらったもんね!」
小川が勝ち誇ったように言うと、マタロウはいつになく真面目な様子で言った。
「助かったよ。今朝、登校した時いきなり襲われて、屋上に拉致された。命の危機を感じたよ。なんで俺がニセモノとわかった?」
小川は、少し照れたように頭をかいた。
「だってお前、いつも朝、みんなより早く登校して、校門で生徒の登校を見守ってるじゃん。それなのに外靴が靴箱に入っているまんまだったから、何かおかしいだろ。
お前に何かあったのかと思って、今日子に頼んで、校内にいるはずのお前を探してもらったんだ。そうしたら、上靴のままのお前が校門前にいる。
お前なら、絶対そんなことはしないだろ。規則だしな。
だから分かったんだ」
マタロウは、なんだかくすぐったくなったのか、
「……だからお前は、やなやつなんだよ」
と口をとがらせて言った。
「部活動規則、部員三名で、活動継続可能。実績も十分だ」
そんな言葉を残して、マタロウは静かに生徒会室に戻って行った。
――小川、平屋、未知はマタロウが去ったドアをしばらく見つめていた。
「噂の新入生を捕まえる」というミッションを終えた探偵研究部は無事、廃部を免れた。三人は静かな達成感を喜び合っていた。
「それにしても、なんでイワンとかいうやつは、謎の新入生なんて目立つようなことしてたんだろうな。静かに、未知を探すこともできただろうに。結果、捕まったし」
小川が、ふと疑問を口にした。
「私をおびき出すために、とも思ったのですが。先輩方のプロファイリング。いい線いってたんじゃないですか?」
未知は静かに、ふわりと笑った。
――学校中で噂になって、注目され、探されたい。そんな承認欲求なんじゃないか――
「まあ、今となっては、想像の中なのですが」
未知は、遠い目をして、話を続けた。
「イワン……。彼は、人生のほとんどをテロリストの中に置いてました。だから、学生のふりをして、もぐりこんで、部活を体験して、同じ年ごろの子供たちと過ごせたことが、楽しかったんじゃないかな?」
その言葉に、小川と平屋は、何も言えなかった。
「科学部のびっくり箱。あれはもう警察に押収されてしまったけど、あんなびっくり箱みたいなもの。人を傷つけるものではなく、ただ、驚かせるためだけのそんなものを、本当はずっと、作りたかったのかもしれません」
未知は、窓の外を見つめ、静かに言った。
「本国に帰ってからは、人格矯正から始まるのでしょう。次は、明るい世界に身を置いてほしい。そう願います」
彼の国は、相変わらず紛争が起こっている。ニュース映像で、犠牲になるこどもたちが映る。
小川は、未知の言葉を聞きながら、心の中で思った。
(僕らの世界は、大人に取り巻かれていて、時として理不尽の中にある。だからこそ、明るいほうにもがくんだ。ジタバタと)
窓から一閃の光が差し込み、少年たちを照らしてくれた。
第一話 うわさの新入生を追え!・了
「これでいいですか?」
未知は、入部申込書を書き上げると、小川に差し出した。そこには、「有栖川美知」という本名が記されていた。
小川が申込書を受け取ると、トントンとノックの音がした。入ってきたのは、生徒会長のマタロウだった。
「へっへー、もう入部届書いてもらったもんね!」
小川が勝ち誇ったように言うと、マタロウはいつになく真面目な様子で言った。
「助かったよ。今朝、登校した時いきなり襲われて、屋上に拉致された。命の危機を感じたよ。なんで俺がニセモノとわかった?」
小川は、少し照れたように頭をかいた。
「だってお前、いつも朝、みんなより早く登校して、校門で生徒の登校を見守ってるじゃん。それなのに外靴が靴箱に入っているまんまだったから、何かおかしいだろ。
お前に何かあったのかと思って、今日子に頼んで、校内にいるはずのお前を探してもらったんだ。そうしたら、上靴のままのお前が校門前にいる。
お前なら、絶対そんなことはしないだろ。規則だしな。
だから分かったんだ」
マタロウは、なんだかくすぐったくなったのか、
「……だからお前は、やなやつなんだよ」
と口をとがらせて言った。
「部活動規則、部員三名で、活動継続可能。実績も十分だ」
そんな言葉を残して、マタロウは静かに生徒会室に戻って行った。
――小川、平屋、未知はマタロウが去ったドアをしばらく見つめていた。
「噂の新入生を捕まえる」というミッションを終えた探偵研究部は無事、廃部を免れた。三人は静かな達成感を喜び合っていた。
「それにしても、なんでイワンとかいうやつは、謎の新入生なんて目立つようなことしてたんだろうな。静かに、未知を探すこともできただろうに。結果、捕まったし」
小川が、ふと疑問を口にした。
「私をおびき出すために、とも思ったのですが。先輩方のプロファイリング。いい線いってたんじゃないですか?」
未知は静かに、ふわりと笑った。
――学校中で噂になって、注目され、探されたい。そんな承認欲求なんじゃないか――
「まあ、今となっては、想像の中なのですが」
未知は、遠い目をして、話を続けた。
「イワン……。彼は、人生のほとんどをテロリストの中に置いてました。だから、学生のふりをして、もぐりこんで、部活を体験して、同じ年ごろの子供たちと過ごせたことが、楽しかったんじゃないかな?」
その言葉に、小川と平屋は、何も言えなかった。
「科学部のびっくり箱。あれはもう警察に押収されてしまったけど、あんなびっくり箱みたいなもの。人を傷つけるものではなく、ただ、驚かせるためだけのそんなものを、本当はずっと、作りたかったのかもしれません」
未知は、窓の外を見つめ、静かに言った。
「本国に帰ってからは、人格矯正から始まるのでしょう。次は、明るい世界に身を置いてほしい。そう願います」
彼の国は、相変わらず紛争が起こっている。ニュース映像で、犠牲になるこどもたちが映る。
小川は、未知の言葉を聞きながら、心の中で思った。
(僕らの世界は、大人に取り巻かれていて、時として理不尽の中にある。だからこそ、明るいほうにもがくんだ。ジタバタと)
窓から一閃の光が差し込み、少年たちを照らしてくれた。
第一話 うわさの新入生を追え!・了
