「逞しい男児であれ。炎の英雄に恥じぬ姿を見せよ」
中屋敷志紅は、幼少からそう言われて育てられた。
古くから続く守代の家系。志紅もまた、守代になることが定められていた。
「憎き妖魔を討ち滅ぼすのだ!」
妖魔は血を好み、人襲い、食い殺す。唾棄すべき存在。それを滅ぼすことが役目なのだと、教えられてきた。
雄々しい戦いぶりで妖魔を討ち、英雄と呼ばれた祖父。それに継ぐ二人目の英雄を出すことが、中屋敷家の悲願だった。
志紅が守代になった当時、首都を悩ませていたのは猪に似た妖魔だった。
脂肪がまとわりついた、汚らしい大きな体。生臭く荒い息。太い脚で地面を踏み鳴らし、地震を引き起こす。
動きは早くないが、いくら傷をつけても倒れない耐久性があった。相手取っているうちに山へ逃げられ、傷を癒して再び首都に戻ってくる。その繰り返し。
首都は西洋化と急激な人口増加で、新しい建物が次々と建てられていたが、この妖魔に邪魔をされ、工事がなかなか進まない状況だった。
この妖魔を討ち倒せば、一躍名を上げることが出来る。
それを名誉を得る足掛かりにと思っていた志紅の出鼻をくじいたのが、宮水圭章だった。
志紅よりも三つ年上。守代になったのは確かにあちらが先だったが、守代の家系ではなく、祝具師の名家の出だった。
──祝具師風情が。でしゃばらず下がっていればいいものを──
志紅は、宮水圭章に出会った時、そう思った。
刀を振るい、妖魔と対峙する守代は、危険が伴う分市民からの憧れを受ける、いわば花形の役目でもある。
祝具師も刀の里の職人も、加護の里の巫女も、守代を支える立場でしかない。妖魔を狩ってやっているのは守代なのだ。
加えて古くからの家系である中屋敷家は、その貢献の度合いも違う。
志紅には、その矜持があった。
「それは、傲慢な考え方ではないか」
だから、正面からそう言われた時、志紅が頬が引きつるのが分かった。
確か酒の席だったように思う。それまで他の守代達は、志紅に同調して愚痴さえこぼしていた。
妻の巫女の態度が大きい。祝具師が依頼通りに仕事をしない。そんな風に。
「祝具師なくして守代は戦えず、守代なくして祝具師も巫女も職人も妖魔を狩れない。どちらが上というものではない。そう、私は教えられた」
所詮は綺麗ごとだ。
祝具師や巫女達が、立場を保つために自分に言い聞かせているだけの建前だ。
失笑でもって迎えられると思った発言だったが、志紅の予想を反して、守代達宮水圭章をなだめにかかった。
「まぁ、そうなんだけど。わかってるんだけど。愚痴ぐらい許してくれよ。本当にお前は融通が利かないな」
「愚痴だとしても、支えてくれる者たちを貶める発言をすべきではないと思う」
その言葉に、場は気まずくなった。
それがその場にいない彼らへの申し訳なさからくるもので、場違いな発言に白けたわけではないということが、志紅には腹立たしかった。
(どいつもこいつも、意気地がない──まぁ、いい)
志紅は自分で自分をなだめる羽目になった。
(所詮、一代限りで気まぐれを起こしただけのこと。そのうち守代の辛さに耐えかねて辞めるだろう。代々守代を務めて来た中屋敷家に適う者はいない。覚悟が違う)
実際、少し剣技に優れるからと守代を志しながらも、妖魔の醜悪な外見や討伐の辛さに耐えかねて辞める者は多い。
しかも宮水家は祝具師の名家。道楽息子が守代をしているだけに違いないと、志紅は思っていた。
「代々祝具師として、人を救え、その助けになれと言われて育った。幸い、刀の腕があり、体格に恵まれた。祝具師は年を取ってからも出来る。戦うのは若いうちにしかできないのなら、守代になろうと思った」
その出来すぎた動機も、嗤いながら聞き流して。
だが、志紅が狙っていた妖魔を討伐したのは、宮水圭章だった。
その時、志紅は地震で倒壊した建物で頭を打ち、情けなく気を失っていたのだった。
英雄の称号は宮水圭章へと与えられ、志紅には父親からの失望と叱責が降り注いだ。
(今度こそ──! 今度こそ、成果を! 妖魔の討伐を!)
赤っ恥を掻き、その記憶を塗り替えようと懸命に戦えど、地震の妖魔以降、妖魔は小型化し始め、いくら討伐しても名声が与えられることは無かった。
(負けるものか! 絶対!)
なりふり構わぬ戦いぶりを、守代達から危険だと苦言されても、気に留めている余裕はなかった。
「周りをよく見て戦え。民のみならず、守代をも巻き込みかねない」
渋い顔で忠告する宮水圭章の言い分など、聞く耳を持たなかった。
そもそも、守代は妖魔を狩るために存在している。
討伐の中で倒れるのは本望だろう。多数の被害を防ぐために、多少の被害は仕方がない。
志紅の祖父も、そうやって戦っていた。そして英雄になった。
「危ない──!」
ただ妖魔だけを見据えて刀を振るう志紅の鼓膜を、かすかに打つ憎い相手の声。
その声の正体を知ったのは、妖魔を討った後だった。
志紅が生み出した炎が怪我で倒れた守代を襲った。宮水圭章は守代を庇い、生まれた隙を妖魔につかれて足に怪我を負ったのだそうだ。
宮水圭章はその怪我が元で引退。
余分な情けを催し、自滅しただけのこと。
志紅はそう思い、邪魔ものがいなくなったと清々しい気持ちになった。
「右派の中屋敷のせいだ。あの男のせいで、英雄が引退した」
だが、志紅を責める声が出始めた。
(弱い者の憎まれ口だ。俺がもっと強くなり、英雄と呼ばれるようになれば、掌を返すに違いない)
そのためには、もっと強くならなくては。
志紅はそう思い、次の手を──結婚に踏み切ることにした。
中屋敷家は、代々炎の神の加護を受けた巫女を娶る。結婚後は、妻が加護を授けた祝石を使う。
より強い加護を授けられる巫女が必要だった。そして、嫁入り道具の上質で大きな無垢石も。
その願いが叶い、晶瑚という巫女が中屋敷家に嫁いできた。
ところが、この女──。
「名高い中屋敷家に嫁げるなんて、光栄ですわ」
美しい顔をしていながら、まるで目が笑っていない。口元の笑みの胡散臭いこと。
「お屋敷もご立派ですのね。使用人もたくさん。調度も贅沢ですこと」
中屋敷家の名誉と財産をあてにしているのが、すぐに分かった。
(まあ、扱いやすいことには違いない)
中屋敷家の嫁の条件は、強い炎の加護を与えられること、子を残すことだ。
それ以外は多少の粗にも目をつぶるつもりだった。
贅沢をさせる余裕はある。適当にご機嫌を取っておけば、役目は果たしてくれるだろう。
そうして、晶瑚の嫁入り道具である上質な無垢石から炎の加護の宿る祝石を手に入れ、新たな祝具を得た。
この新たな祝具で、と意気込む志紅だが、取り巻く環境は望みと真逆の方向へ進んでいた。
宮水圭章の婚約、新たな加護。それらは、志紅をさらなる苦境へと追い込んでいた。
「や、やめてくれ! これ以上はやめてくれ!」
悲痛な声がする。
「家が燃えちゃう! 壊れちゃう!」
そう、泣きながら懇願する。
「熱い! 着物が焼けちゃうじゃない! 」
「子が巻き込まれるところだった! 気を付けてよ!」
身勝手な文句さえ聞こえる。
「くそ……!」
小型化した妖魔は、群れで人を襲うようになった。
建物が密集し、人が増えた首都では、人々は逃げ場を失い、守代は十分に刀を振るうことができなくなった。
その日、妖魔が出現したのは、民家が密集している地帯だった。
詰め所にいたのは、右派の守代達。志紅は彼らと共に、妖魔討伐へと乗り出した。
炎の加護は素晴らしく、今までにない力が満ちている。志紅は刀を振るい、炎を巻き起こし、妖魔を焼き払う。
救われた民衆は、志紅を称える。そのはずなのに──。
志紅が炎を巻き起こすたびに、民は悲鳴を上げる。戦いをやめてくれとさえ叫ぶ。
(手を止めれば、妖魔に襲われると言うのに。助けてやっているというのに、身勝手なやつらめ!)
舌打ちを禁じ得ない。
「援軍だ!」
どこからともなく声が上がった。
通りの向こうから、守代達が数人駆け寄ってくるのが見えた。
「左派は下がっていろ……!」
民に媚び、守代の本分を忘れているような奴らだ。手を借りたくなどなかった。
奴らの助太刀がなくとも、妖魔を討ち払うことが出来る。自分にはそれだけの力がある。
志紅はそう思っていた。
「邪魔だ!」
怒鳴る志紅のすぐ傍を、パァンという短い破裂音が裂いた。
聞きなれない音に、意識が奪われる。
(まさか、銃、声……)
守代は代々、刀や槍、弓で戦う。西洋の武器等、歴史ある守代にふさわしくない。
古よりこの国を守る守代としての誇りを手放したも同然だろう。
それなのに。
左派の守り人の一番後ろに佇む人影。軽く足を開き、両手で小さな武器を構えている。
手放したはずの立て襟の制服を身に纏って。
「宮水……!」
刀を捨ててまで、戦場にしがみつくのか。また邪魔をするのか。
みっともない情けないと嗤ってやりたいのに、それが出来ない。
門が閉じていく様に、歓声を上げる市民の声がする。志紅の声がかき消される。
「宮水圭章──!」
憎悪すらもにじむ声を切り裂くように、再び銃声が響いた。
中屋敷志紅は、幼少からそう言われて育てられた。
古くから続く守代の家系。志紅もまた、守代になることが定められていた。
「憎き妖魔を討ち滅ぼすのだ!」
妖魔は血を好み、人襲い、食い殺す。唾棄すべき存在。それを滅ぼすことが役目なのだと、教えられてきた。
雄々しい戦いぶりで妖魔を討ち、英雄と呼ばれた祖父。それに継ぐ二人目の英雄を出すことが、中屋敷家の悲願だった。
志紅が守代になった当時、首都を悩ませていたのは猪に似た妖魔だった。
脂肪がまとわりついた、汚らしい大きな体。生臭く荒い息。太い脚で地面を踏み鳴らし、地震を引き起こす。
動きは早くないが、いくら傷をつけても倒れない耐久性があった。相手取っているうちに山へ逃げられ、傷を癒して再び首都に戻ってくる。その繰り返し。
首都は西洋化と急激な人口増加で、新しい建物が次々と建てられていたが、この妖魔に邪魔をされ、工事がなかなか進まない状況だった。
この妖魔を討ち倒せば、一躍名を上げることが出来る。
それを名誉を得る足掛かりにと思っていた志紅の出鼻をくじいたのが、宮水圭章だった。
志紅よりも三つ年上。守代になったのは確かにあちらが先だったが、守代の家系ではなく、祝具師の名家の出だった。
──祝具師風情が。でしゃばらず下がっていればいいものを──
志紅は、宮水圭章に出会った時、そう思った。
刀を振るい、妖魔と対峙する守代は、危険が伴う分市民からの憧れを受ける、いわば花形の役目でもある。
祝具師も刀の里の職人も、加護の里の巫女も、守代を支える立場でしかない。妖魔を狩ってやっているのは守代なのだ。
加えて古くからの家系である中屋敷家は、その貢献の度合いも違う。
志紅には、その矜持があった。
「それは、傲慢な考え方ではないか」
だから、正面からそう言われた時、志紅が頬が引きつるのが分かった。
確か酒の席だったように思う。それまで他の守代達は、志紅に同調して愚痴さえこぼしていた。
妻の巫女の態度が大きい。祝具師が依頼通りに仕事をしない。そんな風に。
「祝具師なくして守代は戦えず、守代なくして祝具師も巫女も職人も妖魔を狩れない。どちらが上というものではない。そう、私は教えられた」
所詮は綺麗ごとだ。
祝具師や巫女達が、立場を保つために自分に言い聞かせているだけの建前だ。
失笑でもって迎えられると思った発言だったが、志紅の予想を反して、守代達宮水圭章をなだめにかかった。
「まぁ、そうなんだけど。わかってるんだけど。愚痴ぐらい許してくれよ。本当にお前は融通が利かないな」
「愚痴だとしても、支えてくれる者たちを貶める発言をすべきではないと思う」
その言葉に、場は気まずくなった。
それがその場にいない彼らへの申し訳なさからくるもので、場違いな発言に白けたわけではないということが、志紅には腹立たしかった。
(どいつもこいつも、意気地がない──まぁ、いい)
志紅は自分で自分をなだめる羽目になった。
(所詮、一代限りで気まぐれを起こしただけのこと。そのうち守代の辛さに耐えかねて辞めるだろう。代々守代を務めて来た中屋敷家に適う者はいない。覚悟が違う)
実際、少し剣技に優れるからと守代を志しながらも、妖魔の醜悪な外見や討伐の辛さに耐えかねて辞める者は多い。
しかも宮水家は祝具師の名家。道楽息子が守代をしているだけに違いないと、志紅は思っていた。
「代々祝具師として、人を救え、その助けになれと言われて育った。幸い、刀の腕があり、体格に恵まれた。祝具師は年を取ってからも出来る。戦うのは若いうちにしかできないのなら、守代になろうと思った」
その出来すぎた動機も、嗤いながら聞き流して。
だが、志紅が狙っていた妖魔を討伐したのは、宮水圭章だった。
その時、志紅は地震で倒壊した建物で頭を打ち、情けなく気を失っていたのだった。
英雄の称号は宮水圭章へと与えられ、志紅には父親からの失望と叱責が降り注いだ。
(今度こそ──! 今度こそ、成果を! 妖魔の討伐を!)
赤っ恥を掻き、その記憶を塗り替えようと懸命に戦えど、地震の妖魔以降、妖魔は小型化し始め、いくら討伐しても名声が与えられることは無かった。
(負けるものか! 絶対!)
なりふり構わぬ戦いぶりを、守代達から危険だと苦言されても、気に留めている余裕はなかった。
「周りをよく見て戦え。民のみならず、守代をも巻き込みかねない」
渋い顔で忠告する宮水圭章の言い分など、聞く耳を持たなかった。
そもそも、守代は妖魔を狩るために存在している。
討伐の中で倒れるのは本望だろう。多数の被害を防ぐために、多少の被害は仕方がない。
志紅の祖父も、そうやって戦っていた。そして英雄になった。
「危ない──!」
ただ妖魔だけを見据えて刀を振るう志紅の鼓膜を、かすかに打つ憎い相手の声。
その声の正体を知ったのは、妖魔を討った後だった。
志紅が生み出した炎が怪我で倒れた守代を襲った。宮水圭章は守代を庇い、生まれた隙を妖魔につかれて足に怪我を負ったのだそうだ。
宮水圭章はその怪我が元で引退。
余分な情けを催し、自滅しただけのこと。
志紅はそう思い、邪魔ものがいなくなったと清々しい気持ちになった。
「右派の中屋敷のせいだ。あの男のせいで、英雄が引退した」
だが、志紅を責める声が出始めた。
(弱い者の憎まれ口だ。俺がもっと強くなり、英雄と呼ばれるようになれば、掌を返すに違いない)
そのためには、もっと強くならなくては。
志紅はそう思い、次の手を──結婚に踏み切ることにした。
中屋敷家は、代々炎の神の加護を受けた巫女を娶る。結婚後は、妻が加護を授けた祝石を使う。
より強い加護を授けられる巫女が必要だった。そして、嫁入り道具の上質で大きな無垢石も。
その願いが叶い、晶瑚という巫女が中屋敷家に嫁いできた。
ところが、この女──。
「名高い中屋敷家に嫁げるなんて、光栄ですわ」
美しい顔をしていながら、まるで目が笑っていない。口元の笑みの胡散臭いこと。
「お屋敷もご立派ですのね。使用人もたくさん。調度も贅沢ですこと」
中屋敷家の名誉と財産をあてにしているのが、すぐに分かった。
(まあ、扱いやすいことには違いない)
中屋敷家の嫁の条件は、強い炎の加護を与えられること、子を残すことだ。
それ以外は多少の粗にも目をつぶるつもりだった。
贅沢をさせる余裕はある。適当にご機嫌を取っておけば、役目は果たしてくれるだろう。
そうして、晶瑚の嫁入り道具である上質な無垢石から炎の加護の宿る祝石を手に入れ、新たな祝具を得た。
この新たな祝具で、と意気込む志紅だが、取り巻く環境は望みと真逆の方向へ進んでいた。
宮水圭章の婚約、新たな加護。それらは、志紅をさらなる苦境へと追い込んでいた。
「や、やめてくれ! これ以上はやめてくれ!」
悲痛な声がする。
「家が燃えちゃう! 壊れちゃう!」
そう、泣きながら懇願する。
「熱い! 着物が焼けちゃうじゃない! 」
「子が巻き込まれるところだった! 気を付けてよ!」
身勝手な文句さえ聞こえる。
「くそ……!」
小型化した妖魔は、群れで人を襲うようになった。
建物が密集し、人が増えた首都では、人々は逃げ場を失い、守代は十分に刀を振るうことができなくなった。
その日、妖魔が出現したのは、民家が密集している地帯だった。
詰め所にいたのは、右派の守代達。志紅は彼らと共に、妖魔討伐へと乗り出した。
炎の加護は素晴らしく、今までにない力が満ちている。志紅は刀を振るい、炎を巻き起こし、妖魔を焼き払う。
救われた民衆は、志紅を称える。そのはずなのに──。
志紅が炎を巻き起こすたびに、民は悲鳴を上げる。戦いをやめてくれとさえ叫ぶ。
(手を止めれば、妖魔に襲われると言うのに。助けてやっているというのに、身勝手なやつらめ!)
舌打ちを禁じ得ない。
「援軍だ!」
どこからともなく声が上がった。
通りの向こうから、守代達が数人駆け寄ってくるのが見えた。
「左派は下がっていろ……!」
民に媚び、守代の本分を忘れているような奴らだ。手を借りたくなどなかった。
奴らの助太刀がなくとも、妖魔を討ち払うことが出来る。自分にはそれだけの力がある。
志紅はそう思っていた。
「邪魔だ!」
怒鳴る志紅のすぐ傍を、パァンという短い破裂音が裂いた。
聞きなれない音に、意識が奪われる。
(まさか、銃、声……)
守代は代々、刀や槍、弓で戦う。西洋の武器等、歴史ある守代にふさわしくない。
古よりこの国を守る守代としての誇りを手放したも同然だろう。
それなのに。
左派の守り人の一番後ろに佇む人影。軽く足を開き、両手で小さな武器を構えている。
手放したはずの立て襟の制服を身に纏って。
「宮水……!」
刀を捨ててまで、戦場にしがみつくのか。また邪魔をするのか。
みっともない情けないと嗤ってやりたいのに、それが出来ない。
門が閉じていく様に、歓声を上げる市民の声がする。志紅の声がかき消される。
「宮水圭章──!」
憎悪すらもにじむ声を切り裂くように、再び銃声が響いた。
