SurvivorS in Japan

『それでは、これよりランク試験を開始します』

 試験官、桐生の声が地下訓練区画に響く。

 私は訓練場の中央に立っていた。

 とにかく広い。

 ガラス張りの観覧席には、暇そうに見学しているサバイバーたちの姿もある。

(「新人か」)

(「十七歳だってよ」)

(「能力不明の子だろ?」)

(「大丈夫か?」)

 そんな声が聞こえてくる。

『まずは能力確認を行います』

『自由に能力を使用してください』

「自由に……」

 そう言われても。

 いつものように使えばいいだけか。

「……よし」

 私は右手を前に出した。

「絡繰神器――黒死ノ断鎌」

 黒い粒子が右手に集まり、一振りの巨大な黒鎌が姿を現す。

「お?」

「武器生成系か」

「鎌か」

 観覧席の反応はそこまで大きくない。

 珍しくはあるが、武器生成系の能力者は少なくないのだろう。

 だが。

 桐生は書類に目を落とした。

『能力名は不明……』

『他の武器はありますか?』

「あります」

『……見せてください』

「はい」

 黒死ノ断鎌が粒子となって消える。

「絡繰神器――血月ノ魔銃」

 今度は赤黒い光が集まり、二丁の拳銃が現れた。

(「……は?」)

(「銃?」)

(「待て待て待て」)

(「武器変わったぞ」)

『別系統……!?』

 桐生の目が見開かれる。

「まだあります」

「絡繰神器――神槍貫天」

 長大な槍。

「絡繰神器――機神ノー弓矢」

 機械的な装飾を持つ巨大な弓。

「絡繰神器――天壊大槌」

 身の丈を超える大槌。

「絡繰神器――天壊轟砲」

 重厚なキャノン砲。

 そして。

「絡繰神器――鳳翼展開」

 背中から純白の翼が広がった。

(「……」)

(「…………」)

(「は?」)

 観覧席が静まり返る。

(「いやいやいや!」)

(「多すぎるだろ!」)

(「待て待て待て!」)

(「武器生成系じゃねぇ!」)

『なんなんだその能力は!?』

 桐生も思わず叫んでいた。

「あと、これも」

 私は指先を少し切る。

『何をしている!?』

「絡繰神器――天恵修繕」

 淡い光が傷口を包む。

 次の瞬間。

 傷は完全に消えていた。

(「回復能力!?」)

(「嘘だろ!?」)

(「武器に回復!?」)

(「なんでもありかよ!」)

 観覧席は騒然となった。

 私は首を傾げる。

「?」

 そんなに変だろうか。

 昔から使えていたし、私にとっては普通のことなんだけど。

『雨谷小雨さん』

「はい?」

『君……本当に能力を把握していないんですか?』

「?」

「はい」

『……』

 桐生は頭を押さえた。

『とんでもない新人だ……』

 すると、観覧席の上段に居る一人の男が立ち上がった。

(「おいおいおい……」)

 筋肉質の大男。

 コードネーム《鬼砕》。

 Bランクサバイバー。

(「冗談だろ?」)

(「一人で何系統持ってんだ、あの嬢ちゃん」)

 隣の女性も息を呑む。

(「初めて見た……」)

(「こんなの、データベースにもないわよ」)

 別の男が呟く。

(「前例がない」)

(「いや……」)

『異常だ』

 そして。

 観覧席最上部。

 誰にも気づかれることなく。

 一人の女性が静かにモニターを見つめていた。

 腰に差した刀。

 その名は《灼霜》。

 コードネーム――《月冥神楽》。

 『「……」』

 彼女は無言のまま、小さく目を細める。

 十二年前。

 泣きながら震えていた少女。

「……大きくなったね」

 優しく微笑む。

 しかしまだ雨谷小雨は知らない。

 憧れ続けた人が、すぐ近くで、自分を見守っていることを。

 そして。《絡繰神器》という能力が。

 この世界の常識を覆す、前例なき異能力であることを。