タイムリープ10years

 お母さんが用意してくれたお昼ご飯を食べたあと、午後は勉強と読書をかねて図書館にやってきた。

 以前私が通ってた図書館よりも今の図書館のほうが広くて、綺麗で、たくさん本があって、この図書館はこの街に来てからのお気に入りだ。

(えっと、席の確保してから……)

 空いてる座席の席札を取る。そして、席を確保すると、荷物をそこで広げた。

(今日は人が少ないから個人席が取れた。ラッキー)

 些細なことだけど、ちょっとだけ嬉しくなる。少し気分が上がったところで、先程家でやったのとは違う国語ドリルをやり始めた。

 ジッと視線で文章を追いかけて頭の中で読み上げながら、じっくりと考える。

(えっと、ここの主人公の心情は……)

 私はお母さんの影響なのか、国語とか道徳とかで文章を読むのが好きだ。

 国語ができればどの教科の問題文もきちんと読んで理解することができるから、まずは国語をしっかり学ぶこと。そうお母さんに言われていた影響もあって、国語は一番得意で好きな科目だ。

 元々お母さんがよく寝る前に読み聞かせをしてくれるのがきっかけで読書好きになったこともあって、物語を読んで、さらにそこからを自分なりに思考するのが大好きだった。

 勝手におしまいのその先をよく考えてしまい、自分なりにその後を想像し、よくノートに箇条書きに書き散らしていた。

 お母さんにはよく、「麻衣は作家に向いているかもね」と言われたけど、読むのは好きでも文章を書くのは難しくて、上手く言葉にできずにイマイチ自分が考える物語を作ることはできなかった。

(私が考えたことが、勝手に文章になって物語になってくれればいいのに)

 いくら寝ている間に時代は進歩したとはいえ、そんな画期的なものは作られておらず、そんな人生甘くないよねと思いながら、私は新しく始めたドリルを進めていった。

「ふぁぁぁ、っと、って声出ちゃった」

 慌てて口を押さえる。

 キョロキョロと周りを見渡すと、ほとんどの人が離席していたようで、私の欠伸は気づかれていなかったらしく、ホッと胸を撫で下ろす。

 集中していて気づかなかったが、既に時間は十五時を過ぎたところだった。外を見れば、ちょっとだけ日が陰っている。

 集中するととことん没頭してしまう性格なので、時間を忘れて何かに取り組めるっていうのは、それはそれで良かった。

(何かしてないと、色々考えちゃうし)

 今日の成果は国語と算数と理科のドリルの三つである。事故前には塾で受験勉強をしていたこともあって、小学生で学ぶ部分は粗方修学済みだった。

 十年という長い間に記憶がかなり薄れてしまっているのではないかと不安だったけど、やってみると案外覚えていてちょっとホッとしている。

(このペースなら、想像以上に早く復習は終わりそうかも)

 一通り小学生の範囲をやり終え、いよいよ次は中学生用の参考書と過去問でもしてみようかなと席を立つ。

 貴重品を身につけて参考書のコーナーに行き、パラパラとめくる。中を確認しながら、これくらいならそこまで難しくはなさそうかなといくつか参考書を手に取ると、私は再び席に戻った。

(閉館まであと二時間弱だからやれるとこまでやろう)

 今度は持参したノートを開く。

 さすがに中学校の勉強は初めてだ。なので、参考書を読みながら数学なら公式を覚え、古文であれば各行の変換活用などを覚えていく。

 コツさえ掴めば案外どうにかなりそうだと気付いて、私はちょっとしたパズルゲームを解いていく気持ちになりながら再びカリカリと筆を走らせた。

(楽しい)

 そういえば私は昔から勉強が好きだったと思い出す。
 こうやって知らない知識が自分にどんどん吸収されることが面白い。

 どの科目もこれを覚えたことで何か劇的に変わることは何もないけれど、ただ吸収された知識が自分の糧になる気がして、ちょっとした万能感に浸れるのが嬉しかった。
 知らないことを知れることは私にとって喜びだった。

(まぁ、今の私の場合、みんなが既にやっていることに追いつこうとしているだけだけど)

 ちょっとだけ自嘲してちょっとだけ気持ちが沈む。
 でも、それでも、なかった知識が増えていくのは楽しかった。