鬼の巫女姫

第五話

〇村道 昼
風を切るスピードで走る椿と鐵 
やがて、炎上している大きな屋敷が見えてくる。
鐵「酷いな」
 燃えている屋敷を見て鐵は言う。
椿(なぜなの……)「屋敷には結界が張ってあるんです」「人間は侵入すら不可能なはず」
鐵「ひとならざる者……」「正直俺もあいつらを甘く見ていた。山賊上がりの賞金稼ぎかと思っていたが、呪術師と鬼が仲間にいる」

〇公家の格好をした陰陽師と大柄な鬼のカット まだ顔は見えない 黒く霞んでいる感じ。

椿「……鬼が同胞を襲うなんて信じられません」
 (けれど、鬼の気配を感じる。どこか禍々しい気配を放っている)
鐵「姫さまの一族はそうなんだろうよ」「でも、世の中はきれいごとでは済まないことが山のようにあるんだ。地位や名誉や金欲しさに汚いことに手を染めることを厭わない奴らが当たり前にいる」

〇山賊のような鬼のカット
※山賊姿に角が生えている見た目
 山道で女性を攫う様子。

 鐵は付け加えるように言った。
鐵「勅令のせいで鬼たちの暮らしが脅かされることとなり申し訳なかった」「第五連隊は妃候補を探しながら道理に反した者たちを始末しているんだ」
椿は難しい顔をして前を向いている。

〇屋敷の前
屋敷の男衆(着物姿)は首をはねられ地面に横たわっている。
若い女(女中姿)たちは縄で縛られている。五名ほど。
※屋敷の中にいる者たちは人間の姿に角が生えている状態。鬼灯村の村人はまるっと鬼の末裔なので、能力の差はあるがみんな鬼。戦う為に能力を使ったので鬼化している。

鬼狩りの賊たちは男衆と戦っていたり、蔵から千両箱やつづらを運び出している。
無残な光景に椿は膝から崩れ落ちる。

椿「ひどい! なぜこんなことを……」
鐵「鬼狩りめ!」「女を攫《さら》うだけならまだしも鬼たちを殺す必要などないだろう!」「これは帝の顔に泥を塗る行為だ。ゆるせん!」
鐵は剣を鞘から抜くと椿に向かって言い放つ。
鐡「あなたは隠れていなさい」
同時に駆け出し鬼狩りたちにとびかかっていく。
ひとりふたりとものすごい勢いで切りつけると、屋敷の奥へと進んでいく。
颯のような素早さ。
呆然とその背中を見ていた椿はハッとした様に立ち上がり縛られている女たちに駆け寄る。
椿「みんな!」「怪我はない? 助けに来るのが遅れてごめんなさい」
鬼の女(女中)「椿さま!」
 女たちはみな一様に安堵の表情を浮かべる。
椿「いま、その縄を解きます」
 椿は縄に手をかけるとビリッと電流のようなものが流れる。
椿(縄に術がかけられているのか)
椿の力でも十分解くことが出来る。縄を引きちぎり囚われていた女たちを解放する。女たちは泣いたり、地面にしゃがみこんだり、各々の反応を見せる。

椿「みんな、平気?」
鬼の女「はい」
椿「お姉さまたちはどちらに?」
鬼の女1「屋敷の中です。私たちを先に逃がしてくださったのに結局捕まってしまって……」
 女たちは口々に言い合う。
鬼の女2「突然人間の男たちが屋敷に入ってきたんですよ」
鬼の女3「鬼の姿も見ました」
椿「……そう。」「みなはお逃げなさい!私はお姉さまたちを助けに行きます!」
鬼の女1「いけません」「椿さまだけでも逃げてください!」
 娘たちの制止を振り切り、椿は屋敷の中へと進んでいく。
鬼狩りたちの亡骸があちこちに折り重なっている。
椿(これをすべて鐵が?)(しかし強い)
あっけにとられるように呟く。
直ぐに我に返り、勇気を振り絞るかのように歩みを進める。
椿「お姉さまー! いたら返事をしてください!」
 椿は姉たちの気配を探して屋敷を進んでいく。
所どころ炎の壁に遮られうまく進んでいけない。
椿(鐵はどちらに?)
椿モノ『いくら鍛えているとはいえこの劫火の中で人間が耐えるにも限界があるはずだ。』

〇屋敷の奥の間
廊下に鐵の姿を見つける。
廊下から部屋の中の何者かと対峙している感じ。
椿からは部屋の中はよく見えない。

椿「鐵さま!」
鐵「どうしてきた?」「隠れていろと言ったはずだ!」
 鐡は前を見据えたまま答える。
椿「私も戦います!」「あなたにばかり任せてはおけません」
 いいながら近づいて行くと刀を構えた十人ほどの人間が廊下の両側(中庭)から襲い掛かってくる。
椿身構えるが鐵が一瞬で薙ぎ払う。(椿に向かってくる感じで)
薙ぎ払いながら椿の目の前で立ち止まる。至近距離で椿を見つめて
鐵「怪我はないか?」
 椿上目使いで
椿「はい」

〇二人が見つめ合うカット
鐡は真っ直ぐに椿を見つめる。椿はかすかに頬を赤らめる。目を逸らしたいのに晒せないと言った感じ。

次の瞬間ハッと表情を歪める。

椿は鐵の肩越しに部屋の中を見た。
※三十畳ほどの広間のイメージ
大巨大な鬼左右の腕で二人の姉を拘束している。
椿「お姉さま!」
鐵を追い越して部屋の中へと突入する。鐵もすぐ後ろからついてくる。
椿「柚お姉さま! 棗お姉さま!」
  大声で呼びかけてみたが、反応はない。
椿(反応がない)(早く助けなければ‼︎)
鬼の方へ歩み出る椿の腕を掴み引き留める。
鐵「待て!」
その瞬間椿の足元でぽっかりと穴が開く。
椿「きゃっ!」
引き留められなければ落下していた。椿は間一髪の所で足を引っ込める。
椿「あ、ありがとうございます」
険しい表情のまま頷く鐡。
次の瞬間には邪悪な気配に気付き、身構える。
男の声「チッ」「余計なことを」
穴の底から浮かび上がってきたのは平安貴族が着用していた狩衣姿の男。白塗りの顔が不気味に映る。
椿は驚きながらも男を凝視する。
男の体が完全に浮かびきると穴が閉じて畳の床に戻る。
鐡、時麻呂をギロリと睨みつける
男の声「おお怖い」「呪いをかけてやったと言うのに生きているとは……しぶとい男」
戦いの場にそぐわない悠長な話し方。※ちょっとオネェっぽい。
鐡「やっぱりお前のしわざか」「時麻呂‼︎」