第四話
◯母屋 廊下
長い廊下をかけていく椿。
台所の近くで伽耶に声を掛けられる。
伽耶「椿さま」「あの方のお着物と朝食はお運びしました」
椿「伽耶!」
椿は伽耶が無事でひとまずホッとする。
椿「あの人、なにかおかしな様子はなかった?」
伽耶「?」「いいえ。とても丁寧にお礼をされて」「鐵様ってお美しくてとても素敵な殿方ですね」
伽耶は浮かれた様子でそう言った。
椿(伽耶が浮かれるのも無理はない)
椿モノ『鐵は村の男とは違う雰囲気を醸し出している。それは彼が帝都から来た男だからだろう』
伽耶「これからお茶をお持ちしようとしておりました」
椿「ありがとう、伽耶。それは私が」
急須と湯呑を乗せたお盆を受け取る。伽耶は少し残念そう。
椿は廊下を進み鐵のいる部屋へと戻る。
〇鐵の部屋
椿「お茶をお持ちしました」
椿襖を開ける。
軍服に着替えた鐵は刃物のように凛としている。美しさと危うさが混同している様子。
鐵「ご丁寧にありがとうございます。食事がとても美味しいかったです」「服も繕っていただいて感謝申し上げます」
椿は一瞬目を見張る。(ドキンとする。恋愛感情ではなく、魅力的に感じた)直ぐに表情を引き締める。
椿「それはなによりでございます」「これから鬼灯の里とやらに行かれるのですか?」
鐵「はい」
椿「なにゆえに?」
椿は咎めるような表情。
鐵は表情を変えず静かに答える。
鐵「それはあなたには関係のないこ――」
突然話を辞め、何かを感じ取るように宙を見る。
椿「どうされました?」
鐵「来る」
険しい表情で身構える。片足を立てていつでも飛び出せるような感じ。
直後に耳を劈くような爆音が轟く。
椿は耳を塞ぐ。
遅れてきた風圧が来る。建物の壁を大きく揺らす。飛んできた木片がばらばらと降ってくる。
鐵は椿の身を庇うように抱きしめる。
鐵「ご無事ですか?」
耳のすぐ横で鐵の声が聞こえ戸惑う椿。それと同時に左胸を抑える。(男性に抱きしめられるのは初めてで困惑しつつときめいている)胸が締め付けられるような感覚に困惑する。
椿「(どぎまぎしながら)……はい。私は大丈夫です」
鐵「よかった」
言いながら鐵は体を離す。けれど、表情は険しくあたりを警戒している。
椿「いったい、なにが起きたのでしょうか?」
呆然とした状態の椿。
その呟きに応えるように鐵は言う。
鐵「……鬼狩り」
そう言い切るが間違いであって欲しいという微妙な表情を浮かべている。
椿「鬼狩り⁉」
(先ほど宮司から聞いたばかりの忌まわしき言葉)
椿は眉頭を寄せ身を震わせる。
鐵「本当にこの村は鬼灯の里ではないのだろうな?」
真剣な表情で鐵は聞く。
伽耶の足音「(ダダダダ・・・・・・)」
遠くから足音が近づいてくる。襖が勢いよく開く。
伽耶「椿さま、ご無事でしょうか⁉」「ハァハァ」
伽耶。着物が乱れ息を切らしている。
椿「伽耶!」「平気です。伽耶も無事でよかった」
伽耶「椿さま大変です。お屋敷の方から煙が!」
〇椿の実家の屋敷(平屋の母屋と別棟。蔵が数個ある広大な敷地に建つ茅葺屋根の家)から煙が上がっているカット
椿「そんな、まさか……」
椿、困惑と悲しみが入り混じった表情を浮かべる。
椿モノ『 先刻の轟音。屋敷に立ち上る煙。鬼狩り――すべてがひとつに繋がる』
椿「お姉さまたちが危ないわ! 助けに行かないと」
椿はきりっと前を見て震える足で立ち上がる。
伽耶「お供します。姫さま」
椿「いけないわ!」「伽耶はすぐに身を隠しなさい!」
急いで部屋を出ようとすると鐵に腕を掴まれる。振りほどこうとするがその腕からは逃れることが出来ない。
鐵「あなたも隠れた方がいい」
椿「なにを言う! 離しなさい、無礼者!」
椿は叫ぶ。
椿モノ『一刻を争う事態だ。邪魔するものは容赦しない』
大きく息を吸い、気を高める。椿の体の周囲にぼんやりとモヤがかかるイメージ。
椿モノ『鬼の力を使うために時間を要する』
椿(非力な自分が憎い)
鐡「やめておけ」「俺を振り払っても、自ら囚われに行くようなものだぞ」
椿、鐡を睨みつける。
鐡「鬼神大嶽丸《きしんおおたけまる》の子孫、椿姫よ」
椿(なぜそのことを⁈)
椿は目を見張る。
椿(私が大嶽丸の子孫であることは里に暮らす鬼達でしか知り得ぬことのはず)(それを人間が知っているなど、ありえないこと)
椿「どこで聞いたのですか?」
椿睨みつけつつ探るように。
鐡、頷きながら
鐡「やはりそうか」
椿、ハッとする。※カマをかけられていた。
鐡「近衛師団歩兵第五連隊――帝の勅令により編制された特殊部隊だ」
〇第五連隊のカット
西洋式の軍服を着た軍人達がずらりと並ぶ様子
椿「それがなんだと言うのですか⁉︎」
椿少しイラっとする。
鐡「俺はここに所属している。帝の妃となりうる鬼の娘を帝都に連れ帰るのが使命」
椿(つまり、帝直属の鬼狩りということなのね)
椿は鐵を睨みつける。
椿「だからあなたは鬼に襲われたのですね」「自業自得ではないですか!」
鐡、否定するように首を左右振る。
鐡「なにか勘違いをしているようだな」「この傷は鬼狩りの賊と戦って付いたものだ」
まだ癒切らない傷を椿に見せつける。
椿「賊?」「そのようなことに鬼が加担しているというのですか? そのようなデタラメを口にするなんて……あなたなんて助けなければよかった!」
椿は高めた気を鐵にぶつける。
青い炎が鐡の全身を包む。
椿(普通の人間なら一瞬で焼け落ちるはずなのに)
けれど鐵にはまるで効果がない。水の膜に守られているように。
椿「なぜなの?」
効かないことに驚く椿。
鐡「言ったはずだ。俺は特殊部隊にし所属していると。鬼の妖術に耐性がある。これぞ鍛錬の賜物」
椿「でも、呪詛には敵わなかったのでしょう」
(呪いをかけられ、深手を負った。それほどあの呪詛は強力だったということ)
鐡「それを言うなよ……」
少し表情を緩め、情け無いとでも言うように眉尻を下げる。
鐡「あの時は油断しただけだ」「あとひとつ、帝の名誉のために言わせてもらうがこの里を襲っているのは第五連隊との関係はない」「誓って俺たちは鬼を襲わない――」
〇二回目の爆発が起こる。
「ドカーン」と音が響く。
椿(ハッ?! 戦いの気配を感じる)
※ピンとくるというか、異変を感じている様子。
椿は必死に姉たちの気を探った。
〇姉二人のカット
気を探っているのでぼんやりとしか浮かんでいない。
長姉柚 長い銀色の髪の毛で肉付きの良い体。顔立ちははっきり。洋風。
次姉棗 銀の髪を肩の所で切りそろえている。やややせ型の体形。顔立ちは和風。すっきり。
椿(ひとつふたつ、大丈夫まだ近くにある)
鐵「話はあとだ。助けに行くんだろ? 加勢する」
鐵の提案に椿は首を横に振る。
椿「必要ありません」「あなたのことは信用できません」
鐵「そい言うと思った。じゃあこうしよう」「【あなたを裏切ったら俺は死ぬ】」
鐵は空中に指で文字を描く。すると呪符のようなものが現れて彼の首に巻き付いて焼け落ちる。すると赤い痣のような模様だけが残った。
椿は目を見張る。
椿「……なんてことを!」「自分で自分を呪うなんて正気ですか⁉」
鐵「でもこれで安心だろ? あなたが救った命はあなたのものだ」
にこり、と微笑まれ椿は絶句した。
椿(この男の思考が読めない。敵か味方か、それ以外か)(どちらにせよ、今は姉たちを助けに行くことが先決)
「鐡さま、案内します」「参りましょう」
「ああ」
二人部屋を出る。
〇本殿に隠しておいた鐵の剣を返すカット。
〇神社の外 村の道 昼
全速力で走る椿。並走する鐵。
椿(どうか、無事でいて)
近づくにつれ、屋敷の外観と立ち上る煙や赤い炎が見えてくる。
椿「クッ」
怒りに表情をゆがませる。
◯母屋 廊下
長い廊下をかけていく椿。
台所の近くで伽耶に声を掛けられる。
伽耶「椿さま」「あの方のお着物と朝食はお運びしました」
椿「伽耶!」
椿は伽耶が無事でひとまずホッとする。
椿「あの人、なにかおかしな様子はなかった?」
伽耶「?」「いいえ。とても丁寧にお礼をされて」「鐵様ってお美しくてとても素敵な殿方ですね」
伽耶は浮かれた様子でそう言った。
椿(伽耶が浮かれるのも無理はない)
椿モノ『鐵は村の男とは違う雰囲気を醸し出している。それは彼が帝都から来た男だからだろう』
伽耶「これからお茶をお持ちしようとしておりました」
椿「ありがとう、伽耶。それは私が」
急須と湯呑を乗せたお盆を受け取る。伽耶は少し残念そう。
椿は廊下を進み鐵のいる部屋へと戻る。
〇鐵の部屋
椿「お茶をお持ちしました」
椿襖を開ける。
軍服に着替えた鐵は刃物のように凛としている。美しさと危うさが混同している様子。
鐵「ご丁寧にありがとうございます。食事がとても美味しいかったです」「服も繕っていただいて感謝申し上げます」
椿は一瞬目を見張る。(ドキンとする。恋愛感情ではなく、魅力的に感じた)直ぐに表情を引き締める。
椿「それはなによりでございます」「これから鬼灯の里とやらに行かれるのですか?」
鐵「はい」
椿「なにゆえに?」
椿は咎めるような表情。
鐵は表情を変えず静かに答える。
鐵「それはあなたには関係のないこ――」
突然話を辞め、何かを感じ取るように宙を見る。
椿「どうされました?」
鐵「来る」
険しい表情で身構える。片足を立てていつでも飛び出せるような感じ。
直後に耳を劈くような爆音が轟く。
椿は耳を塞ぐ。
遅れてきた風圧が来る。建物の壁を大きく揺らす。飛んできた木片がばらばらと降ってくる。
鐵は椿の身を庇うように抱きしめる。
鐵「ご無事ですか?」
耳のすぐ横で鐵の声が聞こえ戸惑う椿。それと同時に左胸を抑える。(男性に抱きしめられるのは初めてで困惑しつつときめいている)胸が締め付けられるような感覚に困惑する。
椿「(どぎまぎしながら)……はい。私は大丈夫です」
鐵「よかった」
言いながら鐵は体を離す。けれど、表情は険しくあたりを警戒している。
椿「いったい、なにが起きたのでしょうか?」
呆然とした状態の椿。
その呟きに応えるように鐵は言う。
鐵「……鬼狩り」
そう言い切るが間違いであって欲しいという微妙な表情を浮かべている。
椿「鬼狩り⁉」
(先ほど宮司から聞いたばかりの忌まわしき言葉)
椿は眉頭を寄せ身を震わせる。
鐵「本当にこの村は鬼灯の里ではないのだろうな?」
真剣な表情で鐵は聞く。
伽耶の足音「(ダダダダ・・・・・・)」
遠くから足音が近づいてくる。襖が勢いよく開く。
伽耶「椿さま、ご無事でしょうか⁉」「ハァハァ」
伽耶。着物が乱れ息を切らしている。
椿「伽耶!」「平気です。伽耶も無事でよかった」
伽耶「椿さま大変です。お屋敷の方から煙が!」
〇椿の実家の屋敷(平屋の母屋と別棟。蔵が数個ある広大な敷地に建つ茅葺屋根の家)から煙が上がっているカット
椿「そんな、まさか……」
椿、困惑と悲しみが入り混じった表情を浮かべる。
椿モノ『 先刻の轟音。屋敷に立ち上る煙。鬼狩り――すべてがひとつに繋がる』
椿「お姉さまたちが危ないわ! 助けに行かないと」
椿はきりっと前を見て震える足で立ち上がる。
伽耶「お供します。姫さま」
椿「いけないわ!」「伽耶はすぐに身を隠しなさい!」
急いで部屋を出ようとすると鐵に腕を掴まれる。振りほどこうとするがその腕からは逃れることが出来ない。
鐵「あなたも隠れた方がいい」
椿「なにを言う! 離しなさい、無礼者!」
椿は叫ぶ。
椿モノ『一刻を争う事態だ。邪魔するものは容赦しない』
大きく息を吸い、気を高める。椿の体の周囲にぼんやりとモヤがかかるイメージ。
椿モノ『鬼の力を使うために時間を要する』
椿(非力な自分が憎い)
鐡「やめておけ」「俺を振り払っても、自ら囚われに行くようなものだぞ」
椿、鐡を睨みつける。
鐡「鬼神大嶽丸《きしんおおたけまる》の子孫、椿姫よ」
椿(なぜそのことを⁈)
椿は目を見張る。
椿(私が大嶽丸の子孫であることは里に暮らす鬼達でしか知り得ぬことのはず)(それを人間が知っているなど、ありえないこと)
椿「どこで聞いたのですか?」
椿睨みつけつつ探るように。
鐡、頷きながら
鐡「やはりそうか」
椿、ハッとする。※カマをかけられていた。
鐡「近衛師団歩兵第五連隊――帝の勅令により編制された特殊部隊だ」
〇第五連隊のカット
西洋式の軍服を着た軍人達がずらりと並ぶ様子
椿「それがなんだと言うのですか⁉︎」
椿少しイラっとする。
鐡「俺はここに所属している。帝の妃となりうる鬼の娘を帝都に連れ帰るのが使命」
椿(つまり、帝直属の鬼狩りということなのね)
椿は鐵を睨みつける。
椿「だからあなたは鬼に襲われたのですね」「自業自得ではないですか!」
鐡、否定するように首を左右振る。
鐡「なにか勘違いをしているようだな」「この傷は鬼狩りの賊と戦って付いたものだ」
まだ癒切らない傷を椿に見せつける。
椿「賊?」「そのようなことに鬼が加担しているというのですか? そのようなデタラメを口にするなんて……あなたなんて助けなければよかった!」
椿は高めた気を鐵にぶつける。
青い炎が鐡の全身を包む。
椿(普通の人間なら一瞬で焼け落ちるはずなのに)
けれど鐵にはまるで効果がない。水の膜に守られているように。
椿「なぜなの?」
効かないことに驚く椿。
鐡「言ったはずだ。俺は特殊部隊にし所属していると。鬼の妖術に耐性がある。これぞ鍛錬の賜物」
椿「でも、呪詛には敵わなかったのでしょう」
(呪いをかけられ、深手を負った。それほどあの呪詛は強力だったということ)
鐡「それを言うなよ……」
少し表情を緩め、情け無いとでも言うように眉尻を下げる。
鐡「あの時は油断しただけだ」「あとひとつ、帝の名誉のために言わせてもらうがこの里を襲っているのは第五連隊との関係はない」「誓って俺たちは鬼を襲わない――」
〇二回目の爆発が起こる。
「ドカーン」と音が響く。
椿(ハッ?! 戦いの気配を感じる)
※ピンとくるというか、異変を感じている様子。
椿は必死に姉たちの気を探った。
〇姉二人のカット
気を探っているのでぼんやりとしか浮かんでいない。
長姉柚 長い銀色の髪の毛で肉付きの良い体。顔立ちははっきり。洋風。
次姉棗 銀の髪を肩の所で切りそろえている。やややせ型の体形。顔立ちは和風。すっきり。
椿(ひとつふたつ、大丈夫まだ近くにある)
鐵「話はあとだ。助けに行くんだろ? 加勢する」
鐵の提案に椿は首を横に振る。
椿「必要ありません」「あなたのことは信用できません」
鐵「そい言うと思った。じゃあこうしよう」「【あなたを裏切ったら俺は死ぬ】」
鐵は空中に指で文字を描く。すると呪符のようなものが現れて彼の首に巻き付いて焼け落ちる。すると赤い痣のような模様だけが残った。
椿は目を見張る。
椿「……なんてことを!」「自分で自分を呪うなんて正気ですか⁉」
鐵「でもこれで安心だろ? あなたが救った命はあなたのものだ」
にこり、と微笑まれ椿は絶句した。
椿(この男の思考が読めない。敵か味方か、それ以外か)(どちらにせよ、今は姉たちを助けに行くことが先決)
「鐡さま、案内します」「参りましょう」
「ああ」
二人部屋を出る。
〇本殿に隠しておいた鐵の剣を返すカット。
〇神社の外 村の道 昼
全速力で走る椿。並走する鐵。
椿(どうか、無事でいて)
近づくにつれ、屋敷の外観と立ち上る煙や赤い炎が見えてくる。
椿「クッ」
怒りに表情をゆがませる。


