第三話
〇男の部屋 朝
N 『三日後の朝』
椿が部屋を訪れると男は布団の上で上半身だけ起こして座っている。
椿「目を醒ましたのですね!」
安堵と歓喜の気持ちが入り乱れ、椿は男に駆け寄る。
男は咄嗟に壁際に身を寄せ間合いを図る。鋭い眼光に椿はハッとしたように足を止めた。
椿「失礼いたしました。私はこの神社の巫女で椿と申します」
男「ここは鬼灯《ほおずき》の里ではありませんか⁉」
唐突に尋ねられ、椿は息をのんだ。
椿(この村の表向きの名は富士川村という。鬼灯の里と呼んでいるのは鬼たちだけ。それを人間であるこの男が知ってるのはなぜだろう)
椿「いいえ、ここは富士川村です」
椿は平然を装いながらそう答える。すると男は少し安心するように表情を緩めた。
男「そうですか。富士川村……助けていただいた礼もせず失礼いたしました。鐵《くろがね》と申します」
鐵は座り直すと三つ指をついて丁寧に頭を下げる。椿も同じようにして頭を下げた。
鐵「椿さま。俺の着物と剣はどちらに?」
鐵は部屋を見渡しながら尋ねる。
椿「汚れていたので洗濯をさせていただきました。お持ちいたしますのでその間、朝食でもいかがですか?」
鐵「よろしいのですか?」
鐵が素直に申し入れを受けてくれたので椿はホッとする。
「もちろんです。すぐに準備いたします」
部屋を出る椿
〇母屋 台所
椿は伽耶を見つけ話しかける。
椿「あの人が目覚められたの」
伽耶「左様でございますか!」
喜ぶ伽耶。
椿「朝食の準備をお願いできるかしら?」「それとあの方の着替えも」
伽耶「承知しました」
伽耶に朝食と軍服を返却するよう頼んだ。
〇神社 外
外に出た椿は速足で宮司を探す。
ちょうど参道の掃除をしているところだった。
宮司を見つけ駆け寄る。
宮司「姫さま。そのように血相を変えてられてどうなさいました?」
息を切らせて駆け寄ってきた椿に宮司は不穏な空気を察知したのであろう。
竹ぼうきを放り投げ椿へと駆け寄る。
椿「じ、実はあの方が目を覚まされて、ここは鬼灯の里かと尋ねられたのです」
鬼灯の里と聞いて宮司は驚きを隠せない。
宮司「なんと⁉ ……まさか鬼狩り」
椿「鬼狩り?」
その不穏な言葉に椿は顔を顰める。
宮司「噂によれば帝が後宮に鬼の女を集めているらしいのです」
宮司の想像のカット
座敷牢にたくさんの若い女性が押し込められている
宮司、ありえないとでも言うように首を左右に振る。
椿「帝が? なぜそのようなことをなさるのでしょうか」
顔を顰めながら聞く。
宮司「詳しくは分かりませんが、勅令を下されたのだとか」「高い報酬目当てに人攫いのようなやり方をする人間もいると聞きます」
宮司の想像カット
悪そうな男たちが女性を取り囲む
宮司「こんな僻地にまでその手が伸びていているとは考えにくいのですが、鬼灯の里の名を知っているということはその可能性が高いと思われます……」
宮司、怒りに震える。
椿、青ざめて震える。
椿モノ『初めて耳にする話だった。近隣の村との交流はあるものの帝都の噂はほとんど耳に届かない』『鬼狩りなどという恐ろしいことが現実にあるなど想像すらしたくない。だが、鐵の傷を鬼が付けたことの合点がいく』
椿、意を決したようすで、
椿「あの者には早急にこの村から去っていただきましょう」(はじめから長く置いておくつもりはなかった。傷がいえた今、早々に立ち去ってもらおう)
椿は宮司に背を向けて走り出す。
鐵の元に向かった。
〇男の部屋 朝
N 『三日後の朝』
椿が部屋を訪れると男は布団の上で上半身だけ起こして座っている。
椿「目を醒ましたのですね!」
安堵と歓喜の気持ちが入り乱れ、椿は男に駆け寄る。
男は咄嗟に壁際に身を寄せ間合いを図る。鋭い眼光に椿はハッとしたように足を止めた。
椿「失礼いたしました。私はこの神社の巫女で椿と申します」
男「ここは鬼灯《ほおずき》の里ではありませんか⁉」
唐突に尋ねられ、椿は息をのんだ。
椿(この村の表向きの名は富士川村という。鬼灯の里と呼んでいるのは鬼たちだけ。それを人間であるこの男が知ってるのはなぜだろう)
椿「いいえ、ここは富士川村です」
椿は平然を装いながらそう答える。すると男は少し安心するように表情を緩めた。
男「そうですか。富士川村……助けていただいた礼もせず失礼いたしました。鐵《くろがね》と申します」
鐵は座り直すと三つ指をついて丁寧に頭を下げる。椿も同じようにして頭を下げた。
鐵「椿さま。俺の着物と剣はどちらに?」
鐵は部屋を見渡しながら尋ねる。
椿「汚れていたので洗濯をさせていただきました。お持ちいたしますのでその間、朝食でもいかがですか?」
鐵「よろしいのですか?」
鐵が素直に申し入れを受けてくれたので椿はホッとする。
「もちろんです。すぐに準備いたします」
部屋を出る椿
〇母屋 台所
椿は伽耶を見つけ話しかける。
椿「あの人が目覚められたの」
伽耶「左様でございますか!」
喜ぶ伽耶。
椿「朝食の準備をお願いできるかしら?」「それとあの方の着替えも」
伽耶「承知しました」
伽耶に朝食と軍服を返却するよう頼んだ。
〇神社 外
外に出た椿は速足で宮司を探す。
ちょうど参道の掃除をしているところだった。
宮司を見つけ駆け寄る。
宮司「姫さま。そのように血相を変えてられてどうなさいました?」
息を切らせて駆け寄ってきた椿に宮司は不穏な空気を察知したのであろう。
竹ぼうきを放り投げ椿へと駆け寄る。
椿「じ、実はあの方が目を覚まされて、ここは鬼灯の里かと尋ねられたのです」
鬼灯の里と聞いて宮司は驚きを隠せない。
宮司「なんと⁉ ……まさか鬼狩り」
椿「鬼狩り?」
その不穏な言葉に椿は顔を顰める。
宮司「噂によれば帝が後宮に鬼の女を集めているらしいのです」
宮司の想像のカット
座敷牢にたくさんの若い女性が押し込められている
宮司、ありえないとでも言うように首を左右に振る。
椿「帝が? なぜそのようなことをなさるのでしょうか」
顔を顰めながら聞く。
宮司「詳しくは分かりませんが、勅令を下されたのだとか」「高い報酬目当てに人攫いのようなやり方をする人間もいると聞きます」
宮司の想像カット
悪そうな男たちが女性を取り囲む
宮司「こんな僻地にまでその手が伸びていているとは考えにくいのですが、鬼灯の里の名を知っているということはその可能性が高いと思われます……」
宮司、怒りに震える。
椿、青ざめて震える。
椿モノ『初めて耳にする話だった。近隣の村との交流はあるものの帝都の噂はほとんど耳に届かない』『鬼狩りなどという恐ろしいことが現実にあるなど想像すらしたくない。だが、鐵の傷を鬼が付けたことの合点がいく』
椿、意を決したようすで、
椿「あの者には早急にこの村から去っていただきましょう」(はじめから長く置いておくつもりはなかった。傷がいえた今、早々に立ち去ってもらおう)
椿は宮司に背を向けて走り出す。
鐵の元に向かった。


