閃木孝太郎の事件簿

夜空は昨晩、そのイタリアン料理店の舞台でバイオリンを演奏していた。
 店内の雰囲気もよく、心地よい空気が流れていた。
 演奏も終盤に差し掛かったところで急に照明が落ちた。暗闇に包まれた店内は騒然となり皆が慌てふためいていたところ、再び照明がついた。
 スポットライトに照らされて、舞台上の足元に一人の男が倒れている。
 明らかに今まで存在しなかったその男の名前は鈴木尚人、マジシャンだ。

「刺殺体でした。私は容疑者として疑われています。」
 夜空はそう続けたのだった。
「停電から覚めたら足元に死体があったってこと?」
「そうです。ヒラメキさんには事件を解決してその容疑を晴らしてほしいんです。ちなみに犯人は私も知りません。」
「凶器は?」
「見つかってません。」
「なんで犯人だと疑われているの?他に容疑者はいないのか?」
「舞台上には私しかいなかったんです。そしてもう一つ…錯乱した私は死体にたくさん触ってしまったんです。それはもうベタベタと!舞台に上がった父に止められるまで何度も体を揺すっていました。おかげで犯人の痕跡は無くなってしまったんです」

 それが事件のあらすじであった。
 夜空は自ら死体に残った痕跡を消してしまったことで犯人だと疑われているようだ。頭を捻ってみたがこの段階で彼女の容疑を晴らすのは難しいようだった。
「わかった。とりあえず現場が見たいかな」
「そうですね、まずはレストランに行ってみましょう。オーディションのために今は貸切で事件現場に変わっているはずです」