閃木孝太郎の事件簿

劇場のあるビルの一階にはおしゃれなカフェが入っていた。名瀬改め閃木はコーヒーを、夜空はクリームソーダを静かに啜っている。
 劇場を出てきてしまっては誰か自分の演技を見るというのか。答えは簡単だと思った。目の前の少女だ。
 こんな少女に自分の人生がかかっていると思うと眩暈がしたがそんなことは口が裂けても言えない。
 そんな思いとは裏腹に夜空はスマホをいじりながらアイスクリームとソーダを混ぜ合わせていた。
「さて夜空くん、そろそろ事件の詳細を聞こうかな?」
 精一杯の名探偵演技を交え閃木が口を開いた。
「あ、そういうの私の前ではいいですよ。私演技見たりしないんで……」
「え?」
 間抜けな声が出た。
 夜空はというと相変わらずスマホを眺めていて「あ!この服可愛いー」なとど独り言を言っている。
「あの…じゃぁ誰が僕の演技をみるの…?」
「座長の前だけでいいってこと!あの人こういうの好きなんですよ、人を試すっていうか……私興味ないんで」
 あっけらかんと言い放った夜空に閃木は肩を落とした。同時にわからなくなった。演技ではなくて何をすればいいのか。
「ヒラメキさんがやることは一つですよ、推理ですよ」
「推理?」
「そう、それを夕暮れまでに完成させればいいんです。
 あそこにレストランが見えますよね?」
 夜空が窓の外を指差す。向かいのビルの一階にこじんまりとしたイタリア料理店が入っていた。
「詳細をお話ししますよ、事件はあそこで起こったんです」