「だからぁ、あんたもう諦めて帰ってきなさいよ!」
電話越しから母のヒステリックな声が響いた。
一夜が明けた。朝食の目玉焼きを焼いていると母からの電話が鳴り、最初は「米はいるか」という話だったのだが次第に落ちたオーディションの話に繋がった。
目玉焼きだけがご機嫌な音楽を奏でている中、名瀬はバツが悪そうに相槌だけを打っていた。
「だからね、あんたはね、昔からね」
「今回はいいところまで行ったんだよ、三次選考まで残ってたわけだし」
「残ればいいってもんじゃないでしょ、だったら昨日のお父さんだってにんじん残してましたけどね、要は受からないと仕事にならないわけですからね」
「手厳しい……」
実際母の言う通りであった。名瀬の夢は結局のところいつまで経っても夢のままなのだ。
「だからねぇあんたねぇ」
「はいはい」
いつものように母は管を巻いていた。
しかし今回ばかりは様子が違った。
「次ダメだったら帰ってきなさい」
母の言葉は唐突であった。こう続く。
「お父さんねぇ、この前ぎっくり腰やっちゃってさぁ、この話したっけ?それからどうにも調子がよくやくて、もう酒瓶持ち上げて配達にいくのもやっとなの。あんたが帰ってきて配達行ってくれるだけでうちは助かるの。」
名瀬の実家は夫婦で営む小さな酒屋であった。商店街に店を構え幾年。近所の飲食店からも支持厚く、お陰様で実家は安泰だと思っていた。
ところが親も歳をとる。名瀬の生活を支えているのはバイト代だけではない。実家からありがたくいただいている仕送りであり、米であり、野菜であった。
つまりはこの大都市東京で、名瀬が生活していくには実家の支援が不可欠であり、それが打ち切られるとなれば生活していく術はない。
母の命令は絶対であった。
電話越しから母のヒステリックな声が響いた。
一夜が明けた。朝食の目玉焼きを焼いていると母からの電話が鳴り、最初は「米はいるか」という話だったのだが次第に落ちたオーディションの話に繋がった。
目玉焼きだけがご機嫌な音楽を奏でている中、名瀬はバツが悪そうに相槌だけを打っていた。
「だからね、あんたはね、昔からね」
「今回はいいところまで行ったんだよ、三次選考まで残ってたわけだし」
「残ればいいってもんじゃないでしょ、だったら昨日のお父さんだってにんじん残してましたけどね、要は受からないと仕事にならないわけですからね」
「手厳しい……」
実際母の言う通りであった。名瀬の夢は結局のところいつまで経っても夢のままなのだ。
「だからねぇあんたねぇ」
「はいはい」
いつものように母は管を巻いていた。
しかし今回ばかりは様子が違った。
「次ダメだったら帰ってきなさい」
母の言葉は唐突であった。こう続く。
「お父さんねぇ、この前ぎっくり腰やっちゃってさぁ、この話したっけ?それからどうにも調子がよくやくて、もう酒瓶持ち上げて配達にいくのもやっとなの。あんたが帰ってきて配達行ってくれるだけでうちは助かるの。」
名瀬の実家は夫婦で営む小さな酒屋であった。商店街に店を構え幾年。近所の飲食店からも支持厚く、お陰様で実家は安泰だと思っていた。
ところが親も歳をとる。名瀬の生活を支えているのはバイト代だけではない。実家からありがたくいただいている仕送りであり、米であり、野菜であった。
つまりはこの大都市東京で、名瀬が生活していくには実家の支援が不可欠であり、それが打ち切られるとなれば生活していく術はない。
母の命令は絶対であった。

