閃木孝太郎の事件簿

「だから!土下座して謝れって言ってんだよ!」
 深夜二時、牛丼屋の店内で酔っ払いの怒号が響く。
 バイトの名瀬大成は酔っ払いにへこへこと頭を下げながら店長に助けを求めていた。

「てめぇよお!玉ねぎはどんどん少なくなるし、俺の財布は寂しいし、テメェの顔は辛気臭いしよぉ!!!土下座しろ!!」

 玉ねぎの量は適量だし、財布が寂しいのはあんたが競馬で擦ったからだし、顔は……。名瀬は自分の顔を思い浮かべ、まぁ悪くない方だろうと思った。

「店長ぉー!もうこの人一時間は同じこと言ってるんだけどさー!なんか言ってやってくださいよ!」
 このままでは埒があかない。名瀬はキッチンにいる店長を呼ぶ。ビシッと言ってやって欲しい。しかし名瀬の期待とは裏腹に、ホールに出てきた店長は「しかたないね」と言った顔で言い放った。

「ん〜名瀬くんここは土下座で頼む」

 世の中はクソだ、牛丼屋の油ぎったテカる床に額を押し付けながら名瀬は人生を謳歌する若者たちへ警鐘をならした。