ココナッツとうどん

「おーい、席に着け~今日は転校生を紹介するぞー」

えっえっと教室内が一気に騒がしくなる
俺の周りも同様。

隣の席の仲川(なかがわ)が、「おい、転校生だってよ」右耳から聞こえた期待に満ちている(ほが)らかな声

「可愛い子がいいな~」と左耳から聞こえる早川(はやかわ)の妄想じみた声

女子確定で話を進めるやつらの会話その1。

「ロング?ショート?」俺はロング派~と続ける仲川

「ショートのクール系!」と要望を述べる早川
「ボーイッシュ女子的な?」
「そそ、身長高め」

女子確定で話を進めるやつらの会話その2。

頭上を行き来する嬉々(うれうれ)としたこいつらの声に

机に突っ伏して朝の仮眠(定期)をとっていた俺はそろそろ起きるかーと低血圧(通常運転)と和解をし体を起こした

「お、弓川(ゆみかわ)が起きたぞ」

「おはよ、今日の夢はなんだった?」

「あー…(かつお)からとった出汁(だし)に水と醤油とみりんに…」

「え、なに?めんつゆ作ってる?」

「あー…たぶん?」

「おー仲川よく分かったな」
早川が仲川を褒める

「へっこう見えて料理は得意だからな」

仲川は両親が遅くまで働いてるらしく、
小さい兄弟たちのためにご飯を作るのは仲川の役割なのだと、そういえば聞いたことがあったな…

なんて考えていると先生が廊下に向かって呼びかけた

「よし、入っていいぞ~みんなに挨拶してくれ」

その合図とともにキュッ、キュッと足音を立てて入り口に人影が現れた

すっと、頭から入ってきたそいつは180cmはあるであろう背丈にやせ形だが、がっしりとした肩。ちょっと乱れてる襟元からのぞく肌は健康的な色をしていた

あー…なんつーんだっけああいうの
昔誰かから教わったような気がすんだよなー

俺はこのとき顔を見る前に思考の旅へと出てしまっていた

うーん、なんだっけな~なんていうんだっけ~?

ザワザワ

それにしても
なんか周りがやけにざわざわしてるな

ざわざわ
さわさわ
さんさん

あー、思い出した

sun-kissed skin(太陽にキスされた肌)だ」

と、言った瞬間
ざわめいていた視線が一斉にこっちを向いた

「…ふっ、お前なにいってんの、」

「いきなりどうした」

両隣から笑い声と冷静なツッコミが同時に聞こえてきた

あー…やっちまったな

そのときやっと俺は転校生の顔を見る

両サイドにウェーブさせながら流した黒髪は肩につかないくらいの長さだった
センターパートの間から真っ直ぐにこっちを見る目はきらりと光り、まるで黒曜石のようだと柄にもなく思ったのだった




カッカッカッカッカカッ!
とチョークを鳴らし先生が黒板に何やら書いていく
そんなに音鳴らさなくても

「彼の名前だ、テスト出るぞー」

うそつけ

俺はその文字に目をやり、左から右へと読んでいく

ん?……英字?

「自己紹介してくれ」

先生が隣のそいつに促す

「初めまして、“Thanapat(タナパット・) Kanapongsaksawan(カナポンサクサワン)”です。」

……え?
聞き取れなかったぞ、俺は意味もなく目を擦ってみる

「“タナパット・カナポンサクサワン”です。」

もう一度言ってくれた、ありがとう

でもわかんない。ごめん。

それを察したのか転校生は、
「ソルって呼んでください」と付け加えた。

それが俺とソルの正式な出会いだった