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「いい加減起きろレアン!」
屋敷に野太い声が響いた。
閑静な森の中に中世を思わせる大きな屋敷が立っている。
ここA国は現代社会にありながら時代に取り残されたような国だった。
ほとんどの家々がいまだに井戸を引いているような街で、中世ヨーロッパのような街並みや人々の暮らしを度々観光客が物見遊山に訪れていた。
シャーロット夫人の屋敷はそんな街の象徴であった。
アサムはこの屋敷の執事長である。齢二五だが日々キビキビと働いており、使用人たちから一目置かれ恐れられていた。
そんなアサムが唯一手を焼く使用人がいる。日が高く登った現在もいびきをかいて寝ているレアン・ダージリンであった。
オレンジ色の髪の毛をくしゃくしゃにし、裸で寝ているレアンはアサムの怒鳴り声も虚しく夢の中を満喫している。
アサムとレアンは幼馴染だ。
子供の頃からこの屋敷で共に働き苦楽を共にしてきた。
当時屋敷は生前の旦那様によって管理され、理不尽な叱咤が幼い二人に降りかかることもあった。
その度にお互い手を握りあい乗り越えてきたのだ。
アサムが執事長になってからも二人の関係は変わっていない。アサムが真面目に働く中、レアンはこっそりリネン室で昼寝をしてた昔のままである。
腹を立てたアサムはレアンのくるまっているシーツを思いっきり引っ張り上げた。
「ん!?ふぁ〜!?何!?」
ようやく眠りから覚めたレアン。怒り心頭のアサム。
鳥たちは嘲笑うかようにご機嫌に鳴いている。
レアンは大変に不機嫌であった。それもそのはず。
「なんだよアサム!今日は休みだろ!
俺だって休みじゃなきゃ朝からキビキビ掃除をして夫人の朝食を運んでたさ!」
「いーや!お前は仕事の日でも隙を見ては昼寝をしている!なぜ俺以外気づかないのか……お前のことが不真面目に見えているのは何故か俺だけだ!ほら起きろ!シャーロット夫人が急遽お出かけになられる!俺たちは付き添うことになったんだ、さっさと着替えるんだな!」
アサムは素っ裸で寝ていたレアンを指差した。
シーツ以外纏うもののないレアンは少々不恰好だが、本人はいたって気にしていないようだった。
気を遣って後ろを向いたアサムだったが、幼馴染の裸など見飽きたものであった。
「もういいよー」
振り返るとそこには『いつもの』メイド服をたなびかせたレアンがいた。
「なぜ今日もメイド服なんだ!」
「夫人はなんでもいいって言ってるじゃないか」
「それは屋敷内の話だ!今日は出かけるって言っただろ!」
レアンはいつもお気に入りの丈の長いメイド服を着ている。背の高い彼に合わせた特注品で男性でもゆったりと着られる。
そんな言い争いをしているとドアがノックされた。
「レアン、準備はできているの?」
顔を覗かせたのは、この屋敷の主人であるシャーロット夫人であった。
元はシャーロット夫人の祖父がこの屋敷に住んでいたが、ある日持病に倒れ、夫人が後を継いだのだ。
元旦那様はお世辞にもいい人とは言えなかった。
身寄りのない少年たちを集め使用人としてこき使い、全員にメイド服を着せた。
その支配は彼が死ぬまで続き、シャーロット夫人が屋敷を継いだことでようやく解放された。
無理矢理着せられたメイド服を気に入っていたものはおらず、現在ではみんな各々の制服を着ている。
レアンを除いては。
「あら、レアンまたそれを着ているの?まぁいいわ、時間がないからそのまま来てちょうだい」
呆れ顔の夫人であったが、レアンの趣味を否定したことは一度もない。レアンもそんな夫人が好きだった。
とはいえ休みだったのに叩き起こされたことに変わりはない、レアンは少しむくれて夫人に尋ねた。
「どうしたんですか夫人そんなに慌てて、俺休みなんですけど」
「ごめんなさいね、緊急事態なの」
夫人は慌てて廊下から手招きをしている。駆け寄るレアンとアサム。
額から冷や汗をかいた夫人はこう告げた。
「魔女が出たわ」
「いい加減起きろレアン!」
屋敷に野太い声が響いた。
閑静な森の中に中世を思わせる大きな屋敷が立っている。
ここA国は現代社会にありながら時代に取り残されたような国だった。
ほとんどの家々がいまだに井戸を引いているような街で、中世ヨーロッパのような街並みや人々の暮らしを度々観光客が物見遊山に訪れていた。
シャーロット夫人の屋敷はそんな街の象徴であった。
アサムはこの屋敷の執事長である。齢二五だが日々キビキビと働いており、使用人たちから一目置かれ恐れられていた。
そんなアサムが唯一手を焼く使用人がいる。日が高く登った現在もいびきをかいて寝ているレアン・ダージリンであった。
オレンジ色の髪の毛をくしゃくしゃにし、裸で寝ているレアンはアサムの怒鳴り声も虚しく夢の中を満喫している。
アサムとレアンは幼馴染だ。
子供の頃からこの屋敷で共に働き苦楽を共にしてきた。
当時屋敷は生前の旦那様によって管理され、理不尽な叱咤が幼い二人に降りかかることもあった。
その度にお互い手を握りあい乗り越えてきたのだ。
アサムが執事長になってからも二人の関係は変わっていない。アサムが真面目に働く中、レアンはこっそりリネン室で昼寝をしてた昔のままである。
腹を立てたアサムはレアンのくるまっているシーツを思いっきり引っ張り上げた。
「ん!?ふぁ〜!?何!?」
ようやく眠りから覚めたレアン。怒り心頭のアサム。
鳥たちは嘲笑うかようにご機嫌に鳴いている。
レアンは大変に不機嫌であった。それもそのはず。
「なんだよアサム!今日は休みだろ!
俺だって休みじゃなきゃ朝からキビキビ掃除をして夫人の朝食を運んでたさ!」
「いーや!お前は仕事の日でも隙を見ては昼寝をしている!なぜ俺以外気づかないのか……お前のことが不真面目に見えているのは何故か俺だけだ!ほら起きろ!シャーロット夫人が急遽お出かけになられる!俺たちは付き添うことになったんだ、さっさと着替えるんだな!」
アサムは素っ裸で寝ていたレアンを指差した。
シーツ以外纏うもののないレアンは少々不恰好だが、本人はいたって気にしていないようだった。
気を遣って後ろを向いたアサムだったが、幼馴染の裸など見飽きたものであった。
「もういいよー」
振り返るとそこには『いつもの』メイド服をたなびかせたレアンがいた。
「なぜ今日もメイド服なんだ!」
「夫人はなんでもいいって言ってるじゃないか」
「それは屋敷内の話だ!今日は出かけるって言っただろ!」
レアンはいつもお気に入りの丈の長いメイド服を着ている。背の高い彼に合わせた特注品で男性でもゆったりと着られる。
そんな言い争いをしているとドアがノックされた。
「レアン、準備はできているの?」
顔を覗かせたのは、この屋敷の主人であるシャーロット夫人であった。
元はシャーロット夫人の祖父がこの屋敷に住んでいたが、ある日持病に倒れ、夫人が後を継いだのだ。
元旦那様はお世辞にもいい人とは言えなかった。
身寄りのない少年たちを集め使用人としてこき使い、全員にメイド服を着せた。
その支配は彼が死ぬまで続き、シャーロット夫人が屋敷を継いだことでようやく解放された。
無理矢理着せられたメイド服を気に入っていたものはおらず、現在ではみんな各々の制服を着ている。
レアンを除いては。
「あら、レアンまたそれを着ているの?まぁいいわ、時間がないからそのまま来てちょうだい」
呆れ顔の夫人であったが、レアンの趣味を否定したことは一度もない。レアンもそんな夫人が好きだった。
とはいえ休みだったのに叩き起こされたことに変わりはない、レアンは少しむくれて夫人に尋ねた。
「どうしたんですか夫人そんなに慌てて、俺休みなんですけど」
「ごめんなさいね、緊急事態なの」
夫人は慌てて廊下から手招きをしている。駆け寄るレアンとアサム。
額から冷や汗をかいた夫人はこう告げた。
「魔女が出たわ」
