* * *
【八月四日 夕方 小雨】
夕方当番より、朝当番へ。
雨は夕方にはほとんど上がっていました。ゲームに夢中になりすぎて来るのが遅れてしまい、ヤギたちに怒られてしまいました。お詫びに今日もブラッシングをしておきます。
旧小屋の掃除のことは気にしないでください。気になったので勝手にやっただけです。
でも、差し出がましいこととは思いますが、今週の飼育当番を替わってあげたことといい、突然掃除を頼まれたことといい、朝当番さんは少し優しすぎるのではないでしょうか。あまり優しすぎる人だと思われてしまうと、まわりの人にたくさん仕事を押し付けられてしまうのではないかと心配です。
前も書いたかもしれませんが、俺は顔が怖い方なので、よく人に誤解されることがあります。一番ひどいときには、たまたま居合わせた万引き現場で、目付きのせいで犯人扱いを受けたことがありました。そのときはたまたま近くにいた優しい方が助けてくれましたが、まわりからの印象というものは、よくない状況を呼び込んでしまうこともあるのだと思います。
人の思い込みは怖いですから、どうか気をつけて。
次に何かを頼まれたとき、もし断りにくければぜひ交換条件をつけてみてください。菓子をよこせでも、次の当番を替われでも、なんでもいいです。なんなら二年のオオガミと約束があるとでも言ってください。何かを断るときには間違いなく役に立てる自信があります。
海の旅路の新作についてさっそく語りたいことがたくさんありますが、ネタバレをしたら死んでも死にきれないので、今日のところは黙っておきます。
お互い頑張りましょう。
(狼)
* * *
「優しいのは狼先輩の方だよな」
いや、オオガミ先輩か。
昨日のちょっとした愚痴だけで、まるで普段の俺の状況まで見抜いているみたいなアドバイスをもらってしまった。胸がほっこりとあたたかくなる。
(でも、居合わせただけで犯人扱いされるなんて、いったいどれだけいかつい顔をしてるんだろう……?)
よっぽど眼光が鋭いとか、不良っぽい見た目をしている人なんだろうか。文を読む感じではこんなに優しそうな人なのに、災難すぎる。
二年のオオガミ先輩。
どんな人なんだろう。さらりと書かれたその名前を、何度も何度も確かめる。
大上。大神。それとも大狼だろうか。
先輩だろうなとは思っていたけれど、やっぱり先輩だった。狼の絵をいつもサイン代わりにしているということは、大狼と書いてオオガミ先輩なのだろうか。動物仲間だと思うと、ますます親近感が湧いてくる。
(でも、あと二日か……)
この交換日記じみたやり取りも、あと二日で終わってしまう。そう思ったら、今から寂しい気持ちになった。
ピコン。
しんみりしていたそのとき、間抜けな通知音が机の上から聞こえてきた。びくりとヤギたちが驚いたように顔を上げる。
「ごめん、俺のスマホだ。舐めないでね」
なんだなんだとヤギたちが近づいてくるのを制しつつ、さてさて誰からの連絡かと画面を覗き込む。前回の教訓を生かして、トークルームに行ってしまわないよう、覗くだけだ。
送り主はやっぱり狐崎くんだった。
――旧小屋の掃除、ありがとう
――日辻ってちんすこう好き?
――土産買ったよ
――渡すついでに宿題見せてくれたりしない?
なんてタイムリーなメッセージだろう。
(俺、やっぱり便利なやつみたいに思われてるのかな)
でも、狐崎くんはとにかく爽やかな人だ。単に親切でお土産を買ってきてくれただけという可能性もまだ残っている。あんまり邪見にはしたくない。
次に何か頼まれたときには交換条件をつけろと大狼先輩はアドバイスしてくれたけれど、はじめからお土産という対価が差し出されているときには、どうしたらいいのだろうか。
数秒返事に悩んだあとで、俺はスマホから目を逸らした。
……難しいことはあとで考えよう。
* * *
【八月五日 朝 くもり】
朝当番より、夕方当番へ。
ヤギたちに異常なし。今日もメイとジューンは元気です。
アドバイスありがとうございます。俺はいつも頼まれごとを断れない方なので、どうして分かるのかと驚きました。
心配してくださってとても嬉しいです。うまく言えませんが、本当に嬉しかったです。ビビりなので実際にうまく断れるかどうかは自信がありませんが、頑張ります。
海の旅路、後編は序盤からシリアスでびっくりしています。これはネタバレじゃないと思うんですが、ヴィータが逃げ回るせいで、ひとりにされたルクスがいよいよ闇堕ちしそうになっているんですけど本当に大丈夫なんでしょうか。あんなに明るかったルクスが本気でへこんでいるものだから気の毒になってきました。ストーリーの続きが気になりすぎるので、いったんサブクエは置いておいてとりあえず最短でクリアを目指そうと思います。
(羊)
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【八月四日 夕方 小雨】
夕方当番より、朝当番へ。
雨は夕方にはほとんど上がっていました。ゲームに夢中になりすぎて来るのが遅れてしまい、ヤギたちに怒られてしまいました。お詫びに今日もブラッシングをしておきます。
旧小屋の掃除のことは気にしないでください。気になったので勝手にやっただけです。
でも、差し出がましいこととは思いますが、今週の飼育当番を替わってあげたことといい、突然掃除を頼まれたことといい、朝当番さんは少し優しすぎるのではないでしょうか。あまり優しすぎる人だと思われてしまうと、まわりの人にたくさん仕事を押し付けられてしまうのではないかと心配です。
前も書いたかもしれませんが、俺は顔が怖い方なので、よく人に誤解されることがあります。一番ひどいときには、たまたま居合わせた万引き現場で、目付きのせいで犯人扱いを受けたことがありました。そのときはたまたま近くにいた優しい方が助けてくれましたが、まわりからの印象というものは、よくない状況を呼び込んでしまうこともあるのだと思います。
人の思い込みは怖いですから、どうか気をつけて。
次に何かを頼まれたとき、もし断りにくければぜひ交換条件をつけてみてください。菓子をよこせでも、次の当番を替われでも、なんでもいいです。なんなら二年のオオガミと約束があるとでも言ってください。何かを断るときには間違いなく役に立てる自信があります。
海の旅路の新作についてさっそく語りたいことがたくさんありますが、ネタバレをしたら死んでも死にきれないので、今日のところは黙っておきます。
お互い頑張りましょう。
(狼)
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「優しいのは狼先輩の方だよな」
いや、オオガミ先輩か。
昨日のちょっとした愚痴だけで、まるで普段の俺の状況まで見抜いているみたいなアドバイスをもらってしまった。胸がほっこりとあたたかくなる。
(でも、居合わせただけで犯人扱いされるなんて、いったいどれだけいかつい顔をしてるんだろう……?)
よっぽど眼光が鋭いとか、不良っぽい見た目をしている人なんだろうか。文を読む感じではこんなに優しそうな人なのに、災難すぎる。
二年のオオガミ先輩。
どんな人なんだろう。さらりと書かれたその名前を、何度も何度も確かめる。
大上。大神。それとも大狼だろうか。
先輩だろうなとは思っていたけれど、やっぱり先輩だった。狼の絵をいつもサイン代わりにしているということは、大狼と書いてオオガミ先輩なのだろうか。動物仲間だと思うと、ますます親近感が湧いてくる。
(でも、あと二日か……)
この交換日記じみたやり取りも、あと二日で終わってしまう。そう思ったら、今から寂しい気持ちになった。
ピコン。
しんみりしていたそのとき、間抜けな通知音が机の上から聞こえてきた。びくりとヤギたちが驚いたように顔を上げる。
「ごめん、俺のスマホだ。舐めないでね」
なんだなんだとヤギたちが近づいてくるのを制しつつ、さてさて誰からの連絡かと画面を覗き込む。前回の教訓を生かして、トークルームに行ってしまわないよう、覗くだけだ。
送り主はやっぱり狐崎くんだった。
――旧小屋の掃除、ありがとう
――日辻ってちんすこう好き?
――土産買ったよ
――渡すついでに宿題見せてくれたりしない?
なんてタイムリーなメッセージだろう。
(俺、やっぱり便利なやつみたいに思われてるのかな)
でも、狐崎くんはとにかく爽やかな人だ。単に親切でお土産を買ってきてくれただけという可能性もまだ残っている。あんまり邪見にはしたくない。
次に何か頼まれたときには交換条件をつけろと大狼先輩はアドバイスしてくれたけれど、はじめからお土産という対価が差し出されているときには、どうしたらいいのだろうか。
数秒返事に悩んだあとで、俺はスマホから目を逸らした。
……難しいことはあとで考えよう。
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【八月五日 朝 くもり】
朝当番より、夕方当番へ。
ヤギたちに異常なし。今日もメイとジューンは元気です。
アドバイスありがとうございます。俺はいつも頼まれごとを断れない方なので、どうして分かるのかと驚きました。
心配してくださってとても嬉しいです。うまく言えませんが、本当に嬉しかったです。ビビりなので実際にうまく断れるかどうかは自信がありませんが、頑張ります。
海の旅路、後編は序盤からシリアスでびっくりしています。これはネタバレじゃないと思うんですが、ヴィータが逃げ回るせいで、ひとりにされたルクスがいよいよ闇堕ちしそうになっているんですけど本当に大丈夫なんでしょうか。あんなに明るかったルクスが本気でへこんでいるものだから気の毒になってきました。ストーリーの続きが気になりすぎるので、いったんサブクエは置いておいてとりあえず最短でクリアを目指そうと思います。
(羊)
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