テンプレみたいな恋だった


あの日の風の痛さを語り終える。カフェの温かさにほぐされた喉の奥に少しだけ、懐かしさと、取り返しのつかなさが混ざった涙の味がした。

犬沢くんに目がかすかに潤んでしまったことを気づかれたくなくて桜ラテの表面を見つめている。すると、彼が私のカップを自分の側に引き寄せた。

「泣くほど苦手なら飲まなきゃいいのに~良かったら代わりに俺のココアどうぞ」
「……ありがとう」

翔ちゃんとの別れの反芻に半泣きになっているのをわかっていながら、犬沢くんは桜ラテのせいにしてくれる。彼のまだ温かいココアを一口飲む。親しみのある甘さで、桜味みたいに複雑ではなく、素直においしかった。

「ごめんね、長々話しちゃって」
「いや、俺が聞きたいって言ったんで。それに、サヤさんの泣いてるとこ見れるなんて、ちょっとラッキーって思ってます」

犬沢くんがやわらかく微笑んでも、笑窪はない。けれど、彼の笑みにほっとして、冗談も言えた。

「泣き顔見てそんなこというの、いじわるだね」
「俺は優しいですよ。一途ですし、お買い得です」

私が茶化すと犬沢くんは眉を下げて、やさしく笑う。

「飲んだら帰りましょうか。送りますね」

そこから犬沢君の口数が減って、私たちはカフェの静かなピアノBGMだけを聞きながら、互いの飲み物を飲み干した。