やっぱり親は物凄く喜んで、まだ少しだけ先なのに、取り寄せる手土産の検討を早速始めてた。
二つ返事で行くといった、ハチさんちのGWのアルバイト。
片道バイクで約一時間。
当然ながらタンデムの経験はなく。
「経験しておく?」
というハチさんのよく分からない気遣いによって、平日だけでなく休日まで行動を共にしてしまった。
初めての二輪車。
こんなに近くでエンジンが鳴ってるのは初めてで、色々じっくり見たいのだけど。
重たそうな黒いフルフェイスの下から覗く、対照的な程に白い首筋と、少し痛んだ毛先。
4月の風は少し冷たく、未明の雨の名残もあるのだけれど。
しっかり厚着したハチさんは、気持ち良さそうにバイクに跨がっていた。
黒で固められた小物とライダースは、車体の細かく輝く鋼色を際立たせる。
「行ける?」
「うん」
ハチさんが背負っていたそれを受け取る。
バッグの中には白いヘルメットが入ってて、さらにその中にグローブとかネックウォーマーとかが適当に詰め込まれていた。
「キツくない?顎紐通せた?」
「大丈夫」
たぶん綺麗にしてくれたんだと思う。
微かに消臭剤の匂いがして、その奥にウレタンスポンジの独特な匂いがする。
ハチさんの身体が少し前傾する。
乗れってことらしい。
軽く跨がった瞬間、車体が沈む。
座る位置をずらすだけで結構上下するから、これ本当に大丈夫?って思った。
背中が、服越しでも分かるしっかりした肩幅が、思ったより近くて。
距離感がバグる。
「座席の隙間に掴むところあるのわかる?出ていい?」
くもった声が、ヘルメット越しに届く。
うん、って言っても聞こえないかな、って思って頷いたらヘルメット同士がぶつかった。
ハチさんの笑い声が回転数をあげたエンジンの音に掻き消され、スタンドを上げたバイクがすっと前に出た。
あ、これ結構不安定…。
そう思った瞬間、止まってしまった。
「モモ、身体くっつけて、運転しにくいわ」
おずおずとハチさんの細い腰を掴む。
と、直ぐに引っ剥がされて腰に巻き付けるように誘導されてしまった。
そして手の甲をぽんぽんと叩かれて、遠慮がちに力を込める。
そして再び回転数の上がるエンジン。
あっという間にスピードに乗っていくのだけど、景色を見る余裕もなくて。
伝わってくる体温だけが気になって仕方がない。
ハチさん越しの春の匂いが流れていく。
…いろんな意味で無理になって、10分もしないうちに降ろしてもらった。
「この時期は車も軽トラも出払っててさ、ごめんな。一時間半…無理かな?」
「…ちゃんとその日は準備と心構えしておくので…バイクがいいです…」
「そう?」
助かるわ。
と言いながらヘルメットを脱ぐハチさんは、乱れた髪をほんの少しだけ直しながら、楽しそうに目を細めるのだ。
二つ返事で行くといった、ハチさんちのGWのアルバイト。
片道バイクで約一時間。
当然ながらタンデムの経験はなく。
「経験しておく?」
というハチさんのよく分からない気遣いによって、平日だけでなく休日まで行動を共にしてしまった。
初めての二輪車。
こんなに近くでエンジンが鳴ってるのは初めてで、色々じっくり見たいのだけど。
重たそうな黒いフルフェイスの下から覗く、対照的な程に白い首筋と、少し痛んだ毛先。
4月の風は少し冷たく、未明の雨の名残もあるのだけれど。
しっかり厚着したハチさんは、気持ち良さそうにバイクに跨がっていた。
黒で固められた小物とライダースは、車体の細かく輝く鋼色を際立たせる。
「行ける?」
「うん」
ハチさんが背負っていたそれを受け取る。
バッグの中には白いヘルメットが入ってて、さらにその中にグローブとかネックウォーマーとかが適当に詰め込まれていた。
「キツくない?顎紐通せた?」
「大丈夫」
たぶん綺麗にしてくれたんだと思う。
微かに消臭剤の匂いがして、その奥にウレタンスポンジの独特な匂いがする。
ハチさんの身体が少し前傾する。
乗れってことらしい。
軽く跨がった瞬間、車体が沈む。
座る位置をずらすだけで結構上下するから、これ本当に大丈夫?って思った。
背中が、服越しでも分かるしっかりした肩幅が、思ったより近くて。
距離感がバグる。
「座席の隙間に掴むところあるのわかる?出ていい?」
くもった声が、ヘルメット越しに届く。
うん、って言っても聞こえないかな、って思って頷いたらヘルメット同士がぶつかった。
ハチさんの笑い声が回転数をあげたエンジンの音に掻き消され、スタンドを上げたバイクがすっと前に出た。
あ、これ結構不安定…。
そう思った瞬間、止まってしまった。
「モモ、身体くっつけて、運転しにくいわ」
おずおずとハチさんの細い腰を掴む。
と、直ぐに引っ剥がされて腰に巻き付けるように誘導されてしまった。
そして手の甲をぽんぽんと叩かれて、遠慮がちに力を込める。
そして再び回転数の上がるエンジン。
あっという間にスピードに乗っていくのだけど、景色を見る余裕もなくて。
伝わってくる体温だけが気になって仕方がない。
ハチさん越しの春の匂いが流れていく。
…いろんな意味で無理になって、10分もしないうちに降ろしてもらった。
「この時期は車も軽トラも出払っててさ、ごめんな。一時間半…無理かな?」
「…ちゃんとその日は準備と心構えしておくので…バイクがいいです…」
「そう?」
助かるわ。
と言いながらヘルメットを脱ぐハチさんは、乱れた髪をほんの少しだけ直しながら、楽しそうに目を細めるのだ。
