最初に言葉を交わしたのは、閑散とした回廊でのことだった。鮮やかな若葉に押し負け、和らいだかのような夕日が差し込み、校舎内を淡く染め上げていた。
先程、呼び出された教室で聞いたばかりの名で呼ぶと、半歩ほど先を歩いていた彼は足を止めて振り返った。
「はじめまして。これからよろしくね」
そう口火を切ると、こちらを見つめるきりとした目元が虚を突かれたように揺らいだ。
初対面であった彼に抱いたのは、真面目そうだなという印象だった。校内にも関わらず眉のあたりまできっちりと被っている学帽や、そのせいで翳って見える端正な面持ちは出会ってから一度も崩れることがなかったのだ。
だから、少し驚いたようなその表情は意外にも幼く見えたが、むしろ好感を覚えた。同級生としての親近感が沸き、友達になれそうだとすら思った。
背丈はほとんど変わらなかったが、多少彼のほうが低かった。そのため、こちらと視線を合わせるために少し顔を上げたからか、学帽の庇の影になっていた双眸がはっきりと窓からの夕照に透かされる。
それを見ておやと思った。これまで気づかなかったが、彼の瞳の色は血のように赤い。夕日のせいかと一瞬考えたが、いくら見事な夕焼けでも真っ黒な瞳ならこうも宝玉みたいに明々と輝かせることはできないだろう。
綺麗な目だねと言おうとした、その矢先。
彼は惚けたような表情を一変させ、威嚇する獣のような剣呑な顔つきに変わる。
「誰がてめぇなんかとよろしくするかよ!」
そして普段から怒鳴り慣れているのだろう、滑らかな罵倒が彼の口から迸った。
紅葉と鹿。役割を全うするにあたって、二人に与えられた一対の名前。
思えばこれが、鹿からの記念すべき第一回目の罵りだったわけである。
先程、呼び出された教室で聞いたばかりの名で呼ぶと、半歩ほど先を歩いていた彼は足を止めて振り返った。
「はじめまして。これからよろしくね」
そう口火を切ると、こちらを見つめるきりとした目元が虚を突かれたように揺らいだ。
初対面であった彼に抱いたのは、真面目そうだなという印象だった。校内にも関わらず眉のあたりまできっちりと被っている学帽や、そのせいで翳って見える端正な面持ちは出会ってから一度も崩れることがなかったのだ。
だから、少し驚いたようなその表情は意外にも幼く見えたが、むしろ好感を覚えた。同級生としての親近感が沸き、友達になれそうだとすら思った。
背丈はほとんど変わらなかったが、多少彼のほうが低かった。そのため、こちらと視線を合わせるために少し顔を上げたからか、学帽の庇の影になっていた双眸がはっきりと窓からの夕照に透かされる。
それを見ておやと思った。これまで気づかなかったが、彼の瞳の色は血のように赤い。夕日のせいかと一瞬考えたが、いくら見事な夕焼けでも真っ黒な瞳ならこうも宝玉みたいに明々と輝かせることはできないだろう。
綺麗な目だねと言おうとした、その矢先。
彼は惚けたような表情を一変させ、威嚇する獣のような剣呑な顔つきに変わる。
「誰がてめぇなんかとよろしくするかよ!」
そして普段から怒鳴り慣れているのだろう、滑らかな罵倒が彼の口から迸った。
紅葉と鹿。役割を全うするにあたって、二人に与えられた一対の名前。
思えばこれが、鹿からの記念すべき第一回目の罵りだったわけである。
