暖は料理に目覚めたようで、めきめきと腕を上げていった。もともと凝り性なのだろう。徐々に品数も増え、手間のかかったメニューも増えた。食材にも金をかけているのだろう。数カ月とたたないうちに、高級店のものと遜色ない料理が並ぶようになった。
おかげでおれの体調はすこぶるよく、体も軽くなっていた。しかし、この調子では病気を口実にするのは難しい。おれの体調を管理することに固執するがゆえにここまでやってのける暖の執念に、不気味なものを感じていた。
「起きてたか」
ドアを開け、暖が入ってくる。おれはまだ布団のなかだった。
料理をつくるようになって、暖がくる頻度も増えた。毎朝その日の食事を運んでから出勤しているようだ。その代わり、朝が早くなったようで、以前のように深夜までやりまくって朝まで寝てそのまま仕事へ向かうということはほとんどなくなった。おれにとっても、一晩中犯されるよりも規則正しい生活と健康的な食事を与えられるほうがいいに決まっている。
「今日はガパオライスつくったから、昼はこっち食え。夜はこっちの箱。スープはこれ」
三食ぶんの食事が入った容器を冷蔵庫に入れる。おれはマットレスに寝そべったまま生返事を返した。どうせいつもどおりすべての容器にきっちりメモが書かれているのだ。間違えようがない。
「聞いてんのか、俊介」
「ん……水」
おれは半分寝ぼけて、ベッドから腕だけを突き出した。
「自分で取れよ」
文句をいいながらも、暖が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。ペットボトルを受け取る瞬間、香水の匂いが鼻を通り抜けた。
ここ数カ月、おなじ香水の匂いをつけてくることがあった。今日もおなじ匂いだった。どう考えても男がつける種類ではない。仕事に関わる相手かと思ったが、朝の出勤前となるとプライベートな関わりと考えるのが妥当だろう。
男のほうが好きといってはいるが、女と行為ができないわけではない。そういう相手がいたとしても不思議ではなかった。
「なんだよ」
おれの視線に気づいた暖が眉を寄せる。
「べつに。早く仕事行けよ」
性的指向についても過去の経験についても、事実かどうか疑っているわけではない。ただ、どちらでもいいとは思っていた。いずれにしても、おれには関係ない。
おかげでおれの体調はすこぶるよく、体も軽くなっていた。しかし、この調子では病気を口実にするのは難しい。おれの体調を管理することに固執するがゆえにここまでやってのける暖の執念に、不気味なものを感じていた。
「起きてたか」
ドアを開け、暖が入ってくる。おれはまだ布団のなかだった。
料理をつくるようになって、暖がくる頻度も増えた。毎朝その日の食事を運んでから出勤しているようだ。その代わり、朝が早くなったようで、以前のように深夜までやりまくって朝まで寝てそのまま仕事へ向かうということはほとんどなくなった。おれにとっても、一晩中犯されるよりも規則正しい生活と健康的な食事を与えられるほうがいいに決まっている。
「今日はガパオライスつくったから、昼はこっち食え。夜はこっちの箱。スープはこれ」
三食ぶんの食事が入った容器を冷蔵庫に入れる。おれはマットレスに寝そべったまま生返事を返した。どうせいつもどおりすべての容器にきっちりメモが書かれているのだ。間違えようがない。
「聞いてんのか、俊介」
「ん……水」
おれは半分寝ぼけて、ベッドから腕だけを突き出した。
「自分で取れよ」
文句をいいながらも、暖が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。ペットボトルを受け取る瞬間、香水の匂いが鼻を通り抜けた。
ここ数カ月、おなじ香水の匂いをつけてくることがあった。今日もおなじ匂いだった。どう考えても男がつける種類ではない。仕事に関わる相手かと思ったが、朝の出勤前となるとプライベートな関わりと考えるのが妥当だろう。
男のほうが好きといってはいるが、女と行為ができないわけではない。そういう相手がいたとしても不思議ではなかった。
「なんだよ」
おれの視線に気づいた暖が眉を寄せる。
「べつに。早く仕事行けよ」
性的指向についても過去の経験についても、事実かどうか疑っているわけではない。ただ、どちらでもいいとは思っていた。いずれにしても、おれには関係ない。


