中の人は秘密なのに、クラスのアイドルが近すぎる

「樹、お前はみどまる行け」

二つの声に挟まれて固まった俺の腕から、父さんが緑化委員の腕章をひったくるみたいに外した。

「学校は俺が出る。市の職員が花の説明しても、今日ならむしろ自然だろ」

「でも」

「これが、みどまる最後のイベントだ。だから、行ってこい」

言い返す暇もなく、父さんはその腕章を自分のシャツの上から巻いた。腰をかばう歩き方のままなのに、変なところだけ早い。

テントの外では、担任がまだこっちを探していた。父さんは片手を上げて、「市の担当です、こっちは任せてください。寄せ植えの説明なら年季があります」ともう先生のところへ向かっている。担任がぱっと顔を明るくして、何度も頭を下げたのが見えた。

俺はその背中と、もう片方の手に残ったみどまるの手袋を見比べた。

「青柳」

呼ばれてそっと外を覗く。

凛央が、ステージ袖の手前でまっすぐこっちを見ていた。何も聞かない顔だった。問い詰めるでも、急かすでもなくて、ただ少しだけ顎を引く。

来い、って言われた気がした。

俺は息を吸って、みどまるの手袋をはめた。