中の人は秘密なのに、クラスのアイドルが近すぎる

休憩はほんの数分で、また本番に戻ることになった。

正直、まだ怖い。でも、さっきよりは呼吸が整っている。

戻る前に、凛央が俺にだけ聞こえる声で言った。

「しんどかったら、フリップ出して」

俺は頷く。

「『みず ください』でも、『きゅうけい』でもいいし」

少しだけ間を置いてから、彼は笑った。

笑った顔が、近い。やっぱり近い。

ステージに戻ってからは、さっきより少しだけうまくやれた。

子どもに手を振る。写真のときは少し顔を傾ける。花壇には近づきすぎない。何より、無理そうなときはちゃんとフリップを握る。

そのたびに凛央がさりげなく立ち位置を変えて、俺の負担が軽くなるようにしてくれる。司会のトークを伸ばしたり、子どもに話しかけたり、自分が前に出るべきところでは華やかに目を引きつけながら、俺が休める隙をつくる。

プロってこういうことなんだろうか。