中の人は秘密なのに、クラスのアイドルが近すぎる

衝立の内側で頭を外した瞬間、外の空気が頬にひやっと触れた。

汗が一気に冷える。
視界が広がる。
息が、やっとまともに入ってくる。

「青柳くん、大丈夫?」

「はい……なんとか」

タオルで首を拭いていると、スタッフさんが業務連絡ノートを差し入れてきた。

「白石さんからです」

心臓がまた変な跳ね方をする。

最後のページを開く。
見慣れた、止めだけ少し強い字が並んでいた。

『フリップ、うれしかった』

『今日、助かった』

『いつか、中の人にちゃんと会ってお礼が言いたい』

俺はそのページを、すぐに閉じられなかった。

みどまるなら、あんなふうにもたれかかられる。
みどまるなら、怖いって声を聞かせてもらえる。
みどまるなら、会いたいって書いてもらえる。

なのに、青柳樹は、その全部のそばにいても名乗れない。

白石が会いたいのは、たしかに俺のはずなのに、青柳樹じゃない――そのどうしようもなさに、俺ははじめて、本気で自分に嫉妬した。