中の人は秘密なのに、クラスのアイドルが近すぎる

次にステージへ戻った凛央は、やっぱり完璧だった。

でも、さっきまでとは少し違う。

笑う角度はきれいなままなのに、どこか無理が薄い。
子どもに手を振るたび、ちゃんと楽しそうに見える。
親子フォトの列が長くなっても、焦らずに一人ずつ声をかけていく。

「みどまると一緒、嬉しい?」

「うん!」

「じゃあ、いい顔して」

その声に、子どもが笑う。
親も笑う。
シャッター音が重なる。

学校の子たちが遠くから手を振っても、凛央はきれいに返した。
そのきれいさはそのままなのに、さっき裏で見せた弱さを知ってしまったあとだと、まぶしさの質まで変わって見える。

すごい。
でも、それだけじゃない。

すごいままで、ちゃんと怖がっていたんだ、とわかると、眩しさが遠くならない。
むしろ少しだけ近くなる。

みどまるの中で汗は相変わらず流れていた。
首筋は熱いし、呼吸も浅い。
それでも、さっきより苦しくない気がするのは、たぶん俺だけじゃなかった。

最後の拍手が広場に広がる。
花の匂いと、土の匂いと、ぬるくなった風が混ざる。

凛央は客席へ向かって深く頭を下げた。
その背中はまっすぐで、最後まできれいだった。