中の人は秘密なのに、クラスのアイドルが近すぎる

一時間目と二時間目の間の休み時間、また凛央の周りに人が集まった。

「昨日の春フェス、出てたよね?」

「みどまると一緒のやつ!」

その名前が出ただけで、俺はシャーペンを落としそうになる。

「うん、出てた」

凛央は笑って答える。

「みどまる、かわいかったよ。……あと、頑張ってた」

胸の奥が変な音を立てた。

頑張ってた、なんて。
そんなふうに言われると、昨日のことをまた思い出してしまう。

「近くで見たかったー!」

「背高かった?」

「葉っぱ揺れてた?」

質問は次々飛んで、凛央はその全部にきちんと返す。でも、自分の手元の教科書からは目を離しすぎない。その姿勢が、やっぱり完璧だった。

結局、入学初日はそれだけで体力を使い切った。

休み時間ごとに凛央の机の周りには人が集まったし、廊下を歩けばすれ違う上級生まで振り返った。女子たちは楽しそうだったし、男子もなんだかんだ気にしていた。本人はそのたびに笑って、うまく受け流して、でも決して輪の外にはならない。

クラスのアイドル、という言葉が、そのまますぎて笑えない。

俺はできるだけ視界の端に追いやるみたいにして、一日をやりすごした。