明けぬ空に、君を想う


あれから待っていると、陽真が来る。


「小夜。」

「陽真さん。」


何度も会ううちに、本当に色んな話をした。

例えば、初めて会った日のコーヒー問題について。


「そういえばあのミルクコーヒー、平気だったんですか?甘いのに、、、」

「ああ、あれね。俺甘いの好きなんだ。」

「えー!」


てっきりいつもミルクなしだから苦手なのかと。
しかも気づいた。
コーヒーを飲んでいる時、若干苦そうな顔をしていることに。


「じゃあもしかして、苦いのは苦手、ですか?」

「え!?」


とても驚いた顔をした。


「違いますか?」

「あたり、、、まあ、小夜ほどじゃないけどね。」


陽真はニヤリと表情を変えて言った。


「え、、、!?」

「見えてないと思った?」

「えー、、、」


あとは、袴について。


「その野花の着物、めっちゃ良いよね。凄く似合ってる。」

「え、、、?ありがとう、ございます。」


そう、私は学校指定のえんじ色の袴に、生成りの野花の着物を合わせている。

ーーただ。


「あまり、姉や母からは地味と言われていて、、、」

「え!?そんなことないよ!見る目ないなー。」


笑って言う陽真。
私は多分、初めて服を褒められた。
だから、嬉しかった。

そして、本の話。


「普段は、こんなふうな本読んでて。」

「え!?それ、俺も好きなやつ!」

「ほんと!?これ凄く文が、、、」


同じ本が好きで、色々共感し合った。

あとは、喫茶店の窓の外をを見たりした。
陽が傾いて、青空から茜空になっていく。


「小夜。あの空も、花も、綺麗だよね。」

「うん。もう、花は散るけど、それでも綺麗、、、」

「なんかさ、、、」

「なに?」

「花増えた?」

「そう、だね。」

なぜか、いつの間にか、敬語が抜けるようになってしまった。
陽真といるのが、あんまりにも楽しくて。
それに、そう言うと陽真も嬉しそうだったから。

『いつまでさん付け敬語なの?』

と、軽く急かされたのもあるけど。


皐月に入った。

あの日から、あっという間に一ヶ月が経とうとしていた。
私は陽真といて、孤独感を感じなかった。
それが日常化されていく。

だからまあ、色々と耐えることができたんだと思う。
今日も、陽真と喫茶店で話をしていた。

「小夜、この流れてる曲良くない?」
「うん。なんか、落ち着く感じの音だね。」
「だよね。何の楽器だろ、、、」

いつも通り、そんな会話をしていた。
平和で穏やかで、でもそれは、長くは続かなかった。


ーー何か、嫌な予感がする。


突然のことだった。

人の声や建物の崩れる音が、外から聞こえた。
かなり遠くだったけど、それでも聞こえた。